多くの女性にとって、「冷え」は当たり前のことかもしれません。
悲しいことに、元々女性は男性に比べて冷えやすくできているのです。
しかし、それを放置すると体調を崩しやすくなりますし、顔色が冴えなくて病的に見えてしまいます。
それどころか、髪にも悪影響が出てしまうのです。
この原因の一つに「ゴースト血管」があります。
その名の通り、血管が幽霊になる、つまりなくなってしまうのです。
今回は、このゴースト血管について、詳しく解説しましょう。
女性の身体はなぜ冷えやすい?
男性に比べ女性のほうが、冷えを訴える人は多いです。
それは何故でしょうか。
・筋肉がつきにくい
筋肉が動くことで熱が生まれ、それが血液を通して全身に運ばれます。
そのため、筋肉がしっかりついていて運動量も多いほど全身が温かくなります。
しかし、女性は男性に比べ筋肉が少なく、また運動してもつきにくくなっています。
これは、筋肉は男性ホルモンが支配しているからです。
女性にも男性ホルモンは存在しますが、男性の1/5~1/10しかありません。
そのため、どうしても冷えやすいのです。
・自律神経が乱れやすい
体温調節の指令を出しているのは、自律神経です。
皮膚を通して脳が寒さを感じると、自律神経が体温を下げないよう全身に指令を出します。
すると血管を収縮して血液を身体の中心に集め、内臓や重要な組織を温めようとします。
そのため、手足が冷えるのは自然なことなのですが、自律神経が乱れていると体温調節がうまくできないため、冷えが強くなってしまうのです。
女性は男性に比べ生活環境が変わりやすいため、ストレスも溜まりやすくなっています。
ストレスは自律神経を乱す大きな原因で、血管を収縮する交感神経が活性化してしまうため、冷えが悪化しやすいのです。
・皮下脂肪が多い
女性ホルモンの働きによって、女性は男性よりはるかに皮下脂肪がつきやすくなっています。
これは、妊娠中赤ちゃんを守るためだといわれています。
しかし、皮下脂肪は血管が少ないため、脂肪が多いからといって身体を温める作用はありません。
それどころか気温が下がると冷湿布のようになってしまい、さらに身体を冷やしてしまうのです。
・毛細血管が消滅しやすい
これが今回のテーマ、ゴースト血管です。
私たちの身体には約10万キロ、地球を2周半するほどの長さの血管が存在しています。
そのうち99%が毛細血管で、太い動脈と静脈から分岐して全身をくまなく巡っています。
毛細血管は髪の毛の1/10ほどの太さといわれ、赤血球1個がようやく通れる程度の太さしかありません。
そのため、血管だけでなく赤血球自体にも柔軟性があり、色々と形を変えて毛細血管内をうまく通り抜けられるようになっています。
ところが、冷えで血行が悪くなると血液が毛細血管まで充分届かなくなります。
また、脂肪分の摂り過ぎで血液がドロドロになっている場合も、赤血球の柔軟性がなくなるため毛細血管を通れなくなります。
そういった原因が重なることで毛細血管に血液が届かなくなると、段々短く細くなり、最後に消滅してしまうのです。
これが「ゴースト血管」です。
前述したように、血液は筋肉が生み出す熱を運ぶ役目があります。
その血液が流れなくなるため、特に末端部分に強い冷えが起こるのです。
ゴースト血管がもたらす影響
ここまでは、血管や血液が熱を全身に送ることを説明してきましたが、もちろん他にもたくさんの働きがあります。
そのため、ゴースト血管が増えると以下のような影響が出てくるのです。
・細胞に栄養と酸素が届かなくなる
血液は、私たちが食べたものが消化吸収されてできたものです。
生命維持に必要な栄養素すべてが含まれており、不足すると体調を崩したり病気になりやすくなったりします。
さらに、細胞の新陳代謝には酸素が不可欠ですから、血液が届かなければお肌のターンオーバーもうまくいかなくなるため、肌が硬くゴワゴワになってきてしまいます。
また、メラニン色素の排出が遅くなるためシミやそばかすが増える原因にもなるのです。
・老廃物や有害物質が蓄積される
血液は「心臓~動脈~毛細血管~静脈~心臓」という流れで、常に全身を巡っています。
毛細血管に届いた血液は老廃物や有害物質を静脈に送り、それを腎臓に運んで処理しているのです。
しかし、ゴースト血管状態になると老廃物や有害物質が体内に蓄積されるため、様々な弊害が起こりやすくなります。
最近疲れやすくなったと感じたら、疲労物質がうまく回収されず、体内に蓄積されているということです。
また、血液に中性脂肪やコレステロールが溜まると血液がドロドロになって血管壁に付着するため血管が狭くなり、そこを無理に通ろうとするため血圧が上がりやすくなります。
また、血管の柔軟性が失われもろくなるので動脈硬化を起こし、心筋梗塞や脳梗塞などの原因となるのです。
・認知症の原因となる
脳は非常に多くの酸素を消費する組織で、呼吸によって取り込まれた酸素の約2割が脳によって使われます。
そのため、ゴースト血管が増えて送られる酸素量が減ると、脳の機能が低下してしまいます。
するとボーッとする、集中力がなくなる、理解力が低下するなどの症状がよく見られるようになります。
また、認知症患者の脳を調べると、神経細胞の連絡通路となっている白質という部分に異常が起きていることがわかっています。
これを大脳白質病変といい、血液の巡りが悪くなったことで白質が変化して認知機能が低下してしまうのです。
・髪の毛がもろく抜けやすくなる
頭皮は体温の2~3℃低めが正常といわれていますが、近年30℃を切ってしまう人が増えています。
元々頭頂部には筋肉がないため、熱を生み出しにくくなっています。
頭頂部には帽状腱膜という膜があり、これを前頭筋、側頭筋、後頭筋が引っ張ることで熱が作られています。
しかし生活習慣の変化によってこれらの筋肉が使われなくなってきており、頭皮全体が冷えやすくなっているのです。
すると血流が悪くなるため、髪に栄養が届きにくくなります。
その状態が続くことで、ゴースト血管が増えてしまうのです。
ゴースト血管が増えると、髪の毛にも大きな影響が出てきます。
元々頭皮は心臓から遠く、しかも重力に逆らって送られるため、血液が不足しがちです。
さらに、髪の毛は生命維持に直接関係ないため、血液が届くのは最後です。
そのため元々ゴースト血管が増えやすいのです。
しかも血液がドロドロになったり血液量そのものが少なかったりして頭皮まで届かないと、髪がもろくなったり成長が止まったりして、薄毛や抜け毛の原因となるのです。
ゴースト血管を予防・改善するには
ゴースト血管を特殊な拡大鏡で見ると、健康な血管に比べてねじれていたり、消えかかったりしていることがよくわかります。
しかし、この状態であればまだ大丈夫。
血管が完全に消えてしまうと新しく作ることは大変なのですが、かすかにでも残っていれば、血液をしっかり送り込んであげればすぐに復活するのです。
そこで、ゴースト血管を予防・改善する方法をご紹介しましょう。
・質の良い睡眠を取る
加齢とともに血管が弱ってくるのは不可避ですが、最近は20代でもゴースト血管が増えています。
その大きな原因が睡眠不足です。
睡眠中は成長ホルモンが分泌されますが、このホルモンには細胞を修復する働きがあります。
そのため、しっかり眠れば睡眠中に血管の健康がよみがえり、ゴースト血管を防ぐことができるとされているのです。
睡眠は、長さより質が重要です。
熟睡中に成長ホルモンが分泌されるので、眠りが浅いと血管を充分修復することができません。
脳を興奮させるスマホやパソコン、ゲーム機などは就寝2時間前には切り上げ、入浴やストレッチ、ヨガなどで眠りやすい態勢を整えましょう。
・全身をさする
マッサージのように強くやる必要はありません。
全身を指でやさしくさすってあげましょう。
この時大事なのは、心臓に向かって行なうことです。
足先や指先から上に、首や肩は下にと、心臓に血液を戻すような気持ちで行ないましょう。
・ふくらはぎを強化する
ふくらはぎは第二の心臓といわれ、筋肉が多く集まっています。
そのため、下肢、特にふくらはぎを使った運動をすることで筋肉が効率的に強化され、血流が良くなるのです。
膝を上げてしっかり歩く、スキップをする、軽くジョギングするなど、毎日の生活でできることを行ないましょう。
足首~膝に向かっての強めのマッサージもおすすめです。
・Tie2(タイツー)を活性させる
「Tie2」とは、血管の外に巻き付いている壁細胞を強化し、血管から栄養素や老廃物が漏れないようにしている分子です。
この分子がしっかりしていると血管が強固になり、ゴースト血管を予防することができるとされています。
Tie2を活性化させるには、シナモンやルイボス、かりん、サンザシ、ヒハツ、月桃、スターフルーツを毎日ではなく、「週2~3回」摂るのが良いとされています。
ルイボスなどはお茶として販売されているので、とても手軽ですね。
まとめ
最近若い女性にも広がっているというゴースト血管。
元々女性に多い冷え性に、運動不足や夜更かしなど現代人が怠りやすい日常生活がプラスされ、自らの老化を促進させてしまっているのです。
薄毛や抜け毛が増えたと感じたら、頭皮にゴースト血管が増えている可能性があります。
質の良い睡眠や適度な運動など、できることから始めて老化を食い止めましょう。