「糖化」という言葉を聞いたことがありますか?
近年発見された、老化現象を引き起こす原因の一つで、「酸化」と並んでとても危険なのです。
ご飯やパン、お菓子などが大好きな女性は多いと思いますが、好きなだけ食べていると太りやすくなるだけでなく、お肌や髪にも悪影響を及ぼしてしまいます。
今回は、そんな「糖化」について詳しく解説しましょう。
Contents
「糖化」とは
酸化が「身体のサビ」といわれるのに対し、糖化は「身体のコゲ」と呼ばれます。
身体が焦げるとはどういうことなのでしょうか。
糖化のメカニズム
糖化の「糖」は炭水化物の糖質のことで、砂糖のほか、お米や小麦粉にも多く含まれている成分です。
効率の良いエネルギー源で、アスリートが試合前に積極的に摂取するなど、かなり注目されたこともありました。
しかし、近年この糖質(炭水化物)の摂り過ぎが危険だということが、わかってきたのです。
私たちが食事で摂取した炭水化物は糖質と食物繊維に分けられ、糖質が消化吸収されエネルギー源となります。
しかし糖質の量が多すぎたり運動不足が続いたりすると、摂取した糖質を使い切れず、血中に入り込んでしまいます。
するとタンパク質や脂質と結合するのですが、その際にAGEsという糖化最終生成物を作り出してしまいます。
これが「身体のコゲ」なのです。
「糖化」が「酸化」より危険な理由
酸化の場合、体内には抗酸化物質と呼ばれる、活性酸素の働きを阻害する成分が何種類も存在しており、細胞の酸化=老化を防ぐシステムがあります。
また、ビタミンAやビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、カロテノイドなど、抗酸化作用のある成分もたくさんあり、これらを積極的に摂ることで細胞の老化を予防することができます。
しかし、糖化の場合体内に予防する成分はありません。
また、食材でも現在のところ糖化予防に効果があるとわかっているものは見つかっていません。
そのため、血中の糖を増やさない食事、いわゆる血糖値を上げない「低GI(グリセミック・インデックス)値」のものを食べることが唯一の予防対策となるのです。
「GI値」とは
GI値とは、血中のブドウ糖がどのくらい血糖値を上げるかを表わした数値です。
この数値が高いほど血糖値が上がりやすくなり、糖化しやすくなるのです。
このGI値は、糖質がほとんど含まれていない肉や魚、乳製品が代表的です。
その他、糖質だけでなく食物繊維も多く含まれている玄米や全粒粉なども比較的低く、血糖値を上げにくいとされています。
その反面、白米や精製小麦粉、白砂糖などは非常にGI値が高くなります。
なぜ血糖値が上がるのか
GI値が高いものを食べても、すべてエネルギーとして使い切ってしまえば、全く問題ありません。
しかし、現代人は昔と比べ身体を動かす機会が激減しているため、どうしても糖質が使い切れず、蓄積されてしまうのです。
また、特に女性の場合、ストレスを感じると甘い物が食べたくなるのではないでしょうか。
これは甘い物の主成分であるブドウ糖が脳に入ることで一時的に副交感神経が活性化し、リラックスモードになるからです。
また、糖分や脂肪分を食べておいしいと感じると、脳内でエンドルフィンという「脳内麻薬」が分泌され、幸福感を得られるようになっています。
そのため、ストレスが溜まると無意識のうちに甘い物や脂肪分のこってりしたのものが食べたくなり、結果として血糖値が上がってしまうのです。
「糖化」によって起こる様々な症状
糖化は体内の一部にではなく、全身の細胞に起こる現象です。
細胞が糖化することで、以下のような症状が起こりやすくなります。
肌の弾力性が失われる
肌の弾力性は、真皮層にあるコラーゲンによるものです。
しかし、コラーゲンはタンパク質が主成分なので、糖質と結合してAGEsを生み出してしまい、弾力性を失ってしまいます。
その結果シワやたるみが起こってしまうのです。
シミやくすみの原因となる
糖化はコゲで、AGEsは褐色です。
そのため、皮膚に沈着するとシミやくすみの原因となります。
また、多くのシミはメラニン色素が紫外線などによって活性化してできるものですが、新陳代謝が正常であれば自然に剥がれてなくなります。
しかし糖化が起こると細胞が新陳代謝できなくなるため、メラニン色素が沈着してシミやくすみとなってしまうのです。
動脈硬化が起こる
血管が糖化するともろくなり、血管壁が炎症を起こしやすくなります。
また、血管壁に吸着して硬くしてしまうこともあります。
こういったことで動脈が硬く狭くなると、動脈硬化が起こってきます。
また、劣化した動脈は血圧を高めてしまうため、心筋梗塞や脳卒中の原因にもなるのです。
腎臓の機能が低下する
腎臓は、血液をろ過して有害物質や老廃物を尿として排出する役割があります。
ろ過するのは糸球体と呼ばれるタンパク質のフィルターで、200万個も存在しています。
しかし糖化によって糸球体が劣化すると、不要なものが体内に留まってしまいます。
これが血中から尿に漏れ出した症状が尿蛋白です。
通常、タンパク質は腎臓でろ過された後体内に戻されるのですが、腎臓の機能が低下していると尿に混ざって排出されてしまうのです。
これを放置すると腎臓の機能が悪化し、最悪の場合透析を受けなければならなくなります。
アルツハイマー型認知症の危険性も
現在のところ原因は不明ですが、アルツハイマー型認知症の高齢者の脳には、平均して健常者の約3倍のAGEsが蓄積されているという報告があります。
糖化が頭皮と髪の毛に起こると
全身に悪影響を及ぼす糖化は、頭皮や髪にどのような悪影響をもたらすのでしょうか。
頭皮が硬くなり血行が悪くなる
頭皮にもお肌同様真皮層があり、コラーゲンが頭皮の柔軟性を保っています。
そのため、糖化によってコラーゲンの機能が悪くなると、頭皮が硬くなってしまいます。
すると毛細血管が圧迫されて血流が悪くなり、栄養が届かなくなるため薄毛や抜け毛になりやすくなるのです。
毛細血管が消滅する
血管を構成する細胞はタンパク質が主成分ですから、当然血管も糖化します。すると血管が柔軟性を失い、血液を全身に送る速度が低下します。
頭部の耳から上は毛細血管しかなく、この血管は髪の毛の1/10の太さしかありません。
そのため、血流が悪くなるとなかなか届かなくなるため、血管自体が消滅してしまうのです。
するとその部分にある髪の毛には栄養が届かなくなるため、これも抜け毛の原因となります。
髪の毛がダメージを受ける
糖が排出されず毛細血管から髪の毛に届くと、髪の毛の主成分のケラチンタンパク質と結合してしまいます。
すると、硬いケラチンタンパク質のキューティクルが剥がれやすくなり、内部のコルテックスにあるタンパク質や脂質、水分などが流出しやすくなります。
また、コルテックス内のタンパク質も変質するため、切れ毛や裂け毛、枝毛などの原因となります。
さらに、キューティクルはほぼ透明なのですが、AGEsによって色が茶色っぽくなるためくすみ、ツヤも失われてしまうのです。
特に毛先のダメージが悪化する
近年の研究で、髪の毛の根元より毛先のほうがより糖化が進んでいることがわかりました。
原因として考えられるのが、紫外線です。紫外線によって糖化の速度が増すのではないか、と考えられているのです。
そのため、毛先のほうがより長期間紫外線を浴びており、ダメージも大きくなっています。
手触りが悪くなり、軽くブラッシングするだけで髪の毛が途中からプツンと切れてしまうようなら、糖化がかなり進んでいる可能性があります。
糖化を防ぐために
最初にお伝えしたように、現在のところ糖化を止める栄養素は見つかっていません。
そのため、炭水化物を減らすことが糖化防止に最も効果的と考えられています。
もちろん、炭水化物から作られるブドウ糖は、脳の重要な栄養源です。
脳はブドウ糖以外の栄養を受け付けないため、糖質を全く取らないと脳に障害が出やすくなります。
そこで、毎日の食生活の中で少しずつ炭水化物の摂取を減らしていきましょう。
野菜にも炭水化物は含まれていますが、ご飯やパン、パスタなどに比べればわずかです。
そこで、1日1食は主食を抜く、スイーツはできるだけ甘さ控えめのものを食べる、といった工夫をしましょう。
また、適度な運動で消費エネルギーを増やすことも大切です。
例えば、小柳ルミ子さんは大のお煎餅好きで知られていますが、醤油煎餅1枚の炭水化物は9~10g。
それを多い時は1袋、しかも夜に食べてしまうそうです。
それなのに、スリムな美ボディを維持していますよね。
運動によって、しっかり消費しているのです。
彼女のように激しい運動をすることは無理でも、一駅歩く、階段を昇り降りするといったことでもエネルギーは消費しますから、毎日の生活に取り入れてはいかがでしょうか。