化粧品やヘアケア製品の成分をよく読んでみると、結構「ミネラルオイル」というものが含まれているのがわかります。
「ミネラル」というと健康に良いというイメージがありますから、お肌や髪にも良さそうですよね。
しかしその反面、無添加化粧品などで「ミネラルオイル無添加」などと書かれていることもあり、むしろ悪いような気も…?
そこで今回は「ミネラルオイル」について詳しく解説しましょう。
ミネラルオイルとは
普段何気なく使用している「ミネラル」という言葉を聞いて思い浮かべるのが、鉄や亜鉛、カルシウム、銅などではないでしょうか。
ではミネラルオイルとは、こういったものが含まれた油ということ?
ミネラルオイル=鉱物油=?
化粧品などに配合してあるミネラルオイルは、日本語では鉱物油と訳されていることが多いです。
では鉱物とは?
実は、この鉱物とは「石油」です。
石油を顔や髪に塗る?はっきり言ってとてもイメージが悪いですよね。
そのため、業界では「石油」ではなく「ミネラルオイル」という表現をしているのです。
ミネラルオイル≒ワセリン
「ワセリンは石油から作られている」というのを、聞いたことがありませんか?
ワセリンは1859年に、アメリカの油田で偶然発見されたものです。
石油を採掘する機器にへばりつく黒く粘り気のある泥状の物体がケガを早く直してくれることに気づき、それを精製してワセリンが作られたのです。
ワセリンは、ミネラルオイルと同様石油を精製して作られるものです。
ワセリンが固形なのに対しミネラルオイルは液状、成分が固形パラフィンか流動パラフィンかという違いがありますが、ほぼ同じものと考えて良いでしょう。
ワセリンやミネラルオイルは肌に悪い?
日本にワセリンが入ってきた時、石油から作られるということが広まってしまいました。
また、初期のワセリンは不純物が多く肌荒れや炎症などを起こすこともあり、決して高品質なものとはいえませんでした。
そのため、日本ではなかなか一般に広まることはなかったのです。
しかし、現在は精製技術が非常に高まり、純度が低めな黄色ワセリンのほか、白色ワセリン、プロペト、サンホワイトといった純度の高いものが販売されています。
医療用には白色ワセリンかそれ以上の純度のものが使用されており、安全性は高いと考えられています。
開発国のアメリカでは、一家に1個は必ずあるといわれるほどポピュラーなもので、どこの家庭でもユニリーバ社の青いVaselineなどを塗り薬として使用しています。
では、ミネラルオイルはどうでしょうか。
工業分野で使用されるミネラルオイルは鉱油と呼ばれ、ほとんど精製されていません。
しかし化粧品や医薬品に配合されるものは精製されており、ワセリン同様安全性が高いことが確認されているのです。
すでにスキンケア製品やネイルケア、ヘアケア製品などに配合されていることからも、噂のような悪い働きはほぼないと言えるでしょう。
ベビーオイルの主成分にもなっている
敏感で乾燥しがちな赤ちゃんの保湿用として販売されている「ベビーオイル」。
実はこの商品の多くが、ミネラルオイルからできています。
たとえば代表的なメーカーであるジョンソン・ベビーの製品は、ほぼ100%ミネラルオイルなのです。
このことからしても、安全性が高いことはおわかりいただけるのではないでしょうか。
なお、最近はミネラルオイルではなく、植物性のオリーブオイルやホホバオイルなどを主成分とするベビーオイルもあります。
ミネラルオイルやワセリンの特徴
ミネラルオイルやワセリンが多くの化粧品に配合されていますが、どのような役割を果たしているのでしょうか。その特徴について解説しましょう。
皮膚表面に膜を作る
ベビーオイルにも使用されることからわかるように、ミネラルオイルやワセリンは皮膚表面に薄い膜を作り、外的刺激から肌を守る働きがあります。
また、水分が蒸発するのを防ぐ効果もあることから、保湿剤としてよく使用されています。
肌の触感を柔らかくする
よく化粧品の表現で見られる「エモリエント効果」。
これは、水分の蒸発を防いでうるおいを保つだけでなく、肌の柔軟性が向上することをいいます。
ミネラルオイルやワセリンには、高いエモリエント効果があります。
浸透はしないため表面的なものですが、柔軟性が高まることでシワやたるみの防止に一役買ってくれるのです。
皮膚に浸透しない
ミネラルオイルは、よく皮膚科で乾燥を防ぐために処方されます。
これは、このオイルに皮膚浸透性がほとんどなく、吸収されないからです。
吸収されてしまうと皮膚表面を保護することができなくなってしまうため、植物性オイルよりミネラルオイルのほうがより効果的なのです。
酸化しない
植物性オイルの欠点は、どうしても酸化してしまうことです。
植物の種類によっては酸化しにくいものもありますが、1日中空気に触れていると酸化が早くなってしまいます。
これは紫外線と、オイルに含まれるトリグリセリドという成分を皮膚の常在菌が食べて遊離脂肪酸を放出するためです。
酸化したオイルは肌荒れやかゆみの原因となってしまいます。
その点、ミネラルオイルやワセリンは紫外線や常在菌による酸化がありません。
そのため、皮膚に塗っても肌荒れや炎症、かゆみなどが起こることがほとんどありません。
粘性とべたつきがある
ワセリンは粘性の強いタイプ、ミネラルオイルは比較的サラサラなタイプのオイルですが、どちらも浸透性がないため塗った後ずっとべたつきが続きます。
そのため、たっぷり塗ってしまうと肌が重く感じる人が多いようです。
栄養成分は含まれていない
ミネラルオイルもワセリンも、主成分はパラフィンです。
パラフィンには栄養成分は含まれていないため、使用しても肌が奥から健康になることはありません。
ミネラルオイルやワセリンを髪に使いましょう
どうせなら髪に良いオイルを使いたい…そう思う女性は多いでしょう。
しかし、実際には「髪を健康にするオイル」「髪のダメージを修復するオイル」はありません。
これは、髪の毛がすでに死んだ細胞の集まりだからです。
死んだ細胞に上から何を与えても、生き返って髪に栄養を与えることはないのです。
しかし、ミネラルオイルやワセリンを髪に使用することで、以下のようなメリットがあります。
髪と頭皮を紫外線から守る
これらのオイルは表面に留まって、皮膚や髪を保護する働きがあります。
そのため、髪の毛に塗ると紫外線による日焼けから守ってくれます。
もちろん全く日焼けしないわけではありませんが、ちょっとした外出程度なら充分です。
また、髪の毛が紫外線によってダメージを受けることはよく知られていますが、実は頭皮細胞にもダメージを与えるため、髪の毛の成長が止まり薄毛や細毛になりやすくなります。
ミネラルオイルやワセリンには紫外線を吸収する作用があるため、髪に塗ることで頭皮に紫外線の害が及ばないよう助けてくれるのです。
なお、ワセリンには純度の低い順から黄色ワセリン→白色ワセリン→プロペト→サンホワイトとなっています。
黄色ワセリンでもほぼ日焼けの心配はないといわれていますが、白色ワセリンかそれ以上の純度のものを選んだほうが安心です。
ダメージへアを保護する
乾燥髪はもちろん、ダメージへアを守ってくれるのもミネラルオイルやワセリンです。
特にダメージへアは髪の表面にあるキューティクルが開いたり剥がれたりして、そのままにしておくと髪同士の摩擦などでダメージがどんどん広がってしまいます。
その結果、切れ毛や枝毛、抜け毛などの原因となるのです。
そこでこれらのオイルを塗ると、キューティクルの代わりとなってくれます。
髪のタンパク質や水分、脂質などが逃げ出すのを防いでくれるのです。
細毛をしっかりコーティングする
髪の毛は人によって太さがかなり違います。
これは、髪の毛の表面を覆うキューティクルのうろこ状の組織の枚数や、キューティクルの厚みが違うからです。
細毛の人の多くは健康な髪でもキューティクルの枚数が少なかったり薄かったりするため、太毛の人よりダメージを受けやすくなっています。
また、加齢によって髪に充分な栄養が届かなくなることでも、髪は細くなっていきます。
そこでこれらのオイルを薄く伸ばすことで、細毛のキューティクルがしっかりコーティングされ、ダメージを受けにくくなるのです。
塗り過ぎは厳禁!できるだけ薄く塗りましょう
特にミネラルオイルは水のようなサラサラ感があるので、ついたっぷり塗ってしまいがちです。
しかし、浸透性がないためいつまでもベタベタ感が残ります。
また、そのベタベタにホコリが吸着してしまうため、髪がすぐに汚れてしまいます。
さらに、髪への吸着性が強いため、塗れば塗るほどシャンプーで落ちにくくなってしまいます。
ミネラルオイルやワセリンは手のひらにほんの少量取り、毛先を中心に髪の中間部あたりまでに丁寧に伸ばすようにしましょう。
ミネラルオイルが見つからなければベビーオイルを
「ミネラルオイル」という名称で販売している商品はそれほど多くありません。
見つからない時は、ミネラルオイルが主成分のベビーオイルを使いましょう。
まとめ
ミネラルオイルやワセリンは石油由来ということから、イメージが良くありません。
しかし実際には50年以上の使用実績があり、これまでに重篤な問題は起きていません。
特に髪の毛のダメージにお悩みの方は、一度使ってみてはいかがでしょうか。