薄毛の悩みは、男性だけのものではありません。
髪は女性の命というように、女性に起こればさらに深刻な問題になるのは確かです。
その薄毛の悩みを解決するためにさまざまな試みが行われてきましたが、最先端の技術であるIPS細胞によって解決できるかもしれません。
IPS細胞が持つ可能性
髪がふさふさか、それとも薄いのかによって、受け取る印象は変化します。
そんなことは気にしないという人もいるかもしれませんが、例えば明らかに10代の子供なのにも関わらず髪が薄かったら、何か問題を抱えているのかもしれないと考えるでしょう。
これが当然のことであり、髪が多くの印象を司っていることを示しています。
だからこそ、薄毛を解消するためにさまざまな方法が考えられてきましたが、もっと違ったアプローチとして進められてきているのがIPS細胞を使った方法です。
そもそもIPS細胞は、2006年に誕生した多能性幹細胞のことです。
非常に新しい技術であり、再生医療を変えたと言われています。
それほど大きな影響を与えた技術の発見であり、画期的な技術として迎え入れられたのです。
このIPS細胞は、自分の大細胞を培養して育てていきます。
その中でも、人間の体細胞にごく少数の因子を導入し、ほぼを無限に増殖するような細胞を作り出すのです。
ただ単純に増殖するだけではなく、さまざまな部分へと変化してくれることから、失ったものを再生する可能性が見えてきました。
人工多能性幹細胞という呼び名であり、英語の頭文字を取ってIPS細胞と呼ばれています。
発見したのは日本人であり、大きなニュースにもなったので、名前ぐらいは聞いたことのある人も多いでしょう。
IPS細胞がさまざまな細胞へと分化できる能力を持っているため、応用方法が期待されています。
病気の原因解明にも利用されてきましたが、頭皮で失ってしまった毛母細胞なども再生できる可能性があるのです。
ただし、まだ可能性のレベルであり、どこまで再生できるかははっきりとしていません。
それでも再生医療が進んでいけば、薄毛の悩み自体も過去のものになるかもしれないのです。
人間の成長と肝細胞
人間の成長の過程を考えた場合に、なぜ1個の受精卵が体を作っていくのか考えたことがあるはずです。
不思議なことではありますが、必要なところに必要なものを作るように成長していくのです。
肝臓があるところには肝臓が作られますし、頭部や手が必要なところには細胞が分裂して作り上げていきます。
胎児の間にだけ許される成長であり、臓器などもこの時点で出来上がるのです。
でも、元は1つの細胞でしかありません。
それがなぜ違ったものを作るのか、そこに鍵があるのです。
まずは位置を作ります。
前か後ろかが分からなければどこに何を作るべきかが判断できないからです。
そのために背中とおなかを作り、臓器などの位置を決められるようにするのです。
その上で、幹細胞が出来上がり、情報を交換しながら必要な細胞を作り、臓器などに変わります。
これが人間の肉体的な成長であり、たった1個の受精卵が作り出す大きな力となるのです。
しかし、この幹細胞は、胎児のうちしかありません。
成長すると必要がなくなるからです。
臓器も出来上がりて足も頭もできあがれば必要がなくなります。
ここに再生医療の大きなヒントが隠れていました。
この力をうまく活用できるのなら、失った臓器なども自分の力で作り出せるからです。
ところが、理論はわかっていても誰も成功しませんでした。
胎児から幹細胞を取り出したところで、一つの塊に作り上げることができなかったからです。
とても小さなものであり、立体的に組み合わせなければ機能せず、その状態の維持が出来ませんでした。
その研究が大きく進んだのが2006年のことであり、そのニュースは世界中を駆け巡ったのです。
そこにはコラーゲンが大きく関わっており、10万個もあるような幹細胞をきちんと立体化できるようになりました。
マウスの歯で実験されたものでしたが、ただ出来上がるだけではなく、しっかりと成長し本来の歯と同じような大きさまで出来上がった後に血管も神経も作られていたのです。
それも無限に成長するのではなく、必要な大きさまで成長し、必要以上には大きくなりませんでした。
やがて他の器官に関しても再生の実験に成功しています。
唯一の幹細胞がある毛包
IPS細胞は、自分の細胞を使って培養してきます。
どんなに薄毛になっても、全ての髪を失ってしまうケースはかなりレアです。
つまり、比較的髪が残っている部分をうまく使ってIPS細胞の技術を使い培養していきます。
これを薄くなった部分に移植できれば、自然と髪が生えてくるという考え方が再生医療による薄毛解消といっていいでしょう。
再生医療が髪に応用できているのには理由があります。
髪の毛母細胞だけが、大人になっても細胞分裂を繰り返しているからです。
ここに大きな注目点があるのを忘れてはいけません。
人間の成長は2種類の幹細胞が支えていますが、どの位置にあるのかによって必要なものを作り出しているのです。
その情報のやり取りを2種類の細胞が行なっていますが、うまく情報のやり取りができないと作り出すことができません。
幹細胞は、大人になってから増えていくわけではありません。
つまり、髪が薄くなったからといって、自分の細胞を活用できるわけではないのです。
ところが、髪の成長プロセスを考えてみると、毛母細胞が細胞分裂を繰り返し伸びていることに気がつきます。
ひたすらと細胞分裂を繰り返し、髪が伸びていくわけです。
実はここにある毛包が幹細胞であり、大人になっても持っている唯一の幹細胞なのです。
それもヘアサイクルによって、一定時期がくれば毛包は衰退してなくなります。
そのままではなく、毛包を再生し髪が生えてくるように再生しているのです。
つまり、再生医療の基本となる部分が髪には詰まっていたと言えるでしょう。
分からないことも数多い
人間の髪に再生医療が活用できるかどうかは、まだまだ未知の部分があります。
ラットでの研究実験では、本来生えないはずの種類に毛を生やすことに成功しているのです。
この方法が活用できれば、これまでさまざまな理由で悩んでいた人も、自分の細胞の力によって解決できる可能性が出てきます。
他の場所から髪を移植してくるなどの方法もいりません。
自然と髪を増やせるからです。
ただし、まだまだ分からないところが多くあるのも、IPS細胞の世界です。
完全に分かっていない部分の課題として、安全性が立証できるかどうかという問題もあるでしょう。
免疫拒絶を起こすという話題も上がりましたが、しっかりと分化された状態の細胞を移植しなければ、大きな問題を引き起こすことも分かっています。
ですか、自分の細胞を使って培養したものであれば、免疫反応はほぼ起こらないという実験結果も出ているのです。
さらに他人の細胞でも免疫反応を抑える方法が見つかり始めています。
これらがはっきりと分かれば、他の人の細胞を使って自分の髪を生やすことができるかもしれません。
まとめ
IPS細胞を使った薄毛の治療は、これまでにはなかったような可能性を持っているのは間違いありません。
自分の髪の力を使って増やしていければ、自然な状態に戻すことができるからです。
それも、病気などで失ってしまった髪も元のようにできるかもしれません。
再生医療は神の領域に踏み込んだものともいわれます。
まだまだ分からないことも沢山ある領域であり、実験も繰り返されていますが、いつか薄毛という心配もなくなる時代が来るかもしれないのです。