髪の毛や頭皮を作っている成分の代表的なものが、ケラチンというタンパク質です。
髪の毛と皮膚が同じタンパク質なんて、不思議ですよね。
しかし同じものだからこそ、頭皮にダメージがあると髪の毛にも悪影響を及ぼすのです。
今回はケラチンと薄毛の関係について、解説します。
Contents
ケラチンはアミノ酸の集合体
私たちが食事で摂取するタンパク質は、20種類のアミノ酸で構成されています。
食事で摂ったタンパク質は、まずポリペプチドというアミノ酸の小さな集合体に分解され、さらに20種類のアミノ酸に分けられるのです。
ケラチンタンパク質はこのうち18種類が再結合したもので、それぞれのアミノ酸の割合によって髪や爪になる硬ケラチンと、皮膚の角質層を構成する軟ケラチンに分かれます。
ケラチンの質は食べたものや量によって変化する
髪や頭皮のケラチンのアミノ酸の割合は、人によって多少違います。
これは遺伝によるものの他、普段食事で摂取しているタンパク質の各アミノ酸の量にもよるのです。
食事で摂らなければならない必須アミノ酸
アミノ酸20種類のうち9種類は、食品から摂取しなければならない「必須アミノ酸」です。
通常の食生活を送っていれば、それほど不足することはありません。
しかし、極端なダイエットや偏食を続けていると、9種類のどれかが欠けてきます。
また、11種類は非必須アミノ酸といい体内で合成されますが、これらの多くは魚介類や海藻に多く含まれているグルタミン酸から作られます。
そのため、欧米式の食事が多くこれらの食品の摂取量が少ないと、非必須といえど不足してしまうこともあります。
その状態が続くと、ケラチンの質はどんどん悪くなってしまうのです。
タンパク質はほぼすべての食品に含まれているが…
タンパク質というと、肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などが思い浮かぶのではないでしょうか。
実は、タンパク質はそれ以外の食品にも含まれているのです。
タンパク質のうち、必須アミノ酸9種類がすべてある一定量以上含まれていることを、「アミノ酸スコア100」といいます。
多くの動物性食品はスコアが100で、非常に良質なタンパク質ということになります。
その一方、大豆を除くほとんどの植物性食品は、スコアが低めです。
一例を挙げると、白米はスコア65、小麦粉は39、ブロッコリーは80、にんじんは55です。
つまり、植物性食品のほとんどにも必須アミノ酸は含まれているものの、9種類のうち1種類以上少なく、良質なタンパク質とはいえません。
特に頭皮の健康を保つために重要なアミノ酸であるセリンやグルタミン酸、アルギニンなどは植物性食品にはあまり含まれていません。
そのため、ダイエットで動物性食品を極端に避けてしまうと、頭皮環境が悪くなりやすいのです。
頭皮に栄養が回って来るのは最後
摂取したタンパク質の量が少ないと、アミノ酸に分解されたあと生命維持に大切な部分から優先的に送られます。
心臓や脳が一番先で、髪の毛はなくても命に関わりがないと判断され、頭皮に送られるのは最後です。
そのため、タンパク質不足になると一番先に頭皮のケラチンの質が悪くなり、髪が育ちにくくなるのです。
頭皮とケラチンタンパク質の関係
髪の主成分がケラチンですから、質が低下すれば当然髪質も悪くなり、切れ毛や枝毛、抜け毛などの原因となります。
しかしもっと重要なのは、頭皮や髪を産み育てる毛母細胞にも悪影響が出てくることなのです。
ケラチンが頭皮の劣化を防いでいる
ケラチンタンパク質は、頭皮の表皮最上部の角質層を構成する主成分でもあります。
角質層は、その下の真皮を守る働きがあります。
真皮には肌の弾力性を保ちうるおいを与えるコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンなどがあります。
角質層の表面には天然保湿因子NMFやセラミドなどがあり、水分が逃げないよう、また真皮の成分を紫外線から守るバリアとなっているのです。
しかし、ケラチンタンパク質の質が悪いと角質層のバリア機能が低下し、水分が蒸発しやすくなるだけでなく、頭皮の柔軟性がなくなってきます。
すると皮膚が硬くなり、その下にある毛細血管を押しつぶしてしまうため、血流が悪くなります。
その結果、髪の成長が悪くなってしまうのです。
紫外線による毛母細胞の劣化防止
角質層には、紫外線から毛母細胞を防ぐ働きもあります。
毛穴の一番奥の毛母細胞は真皮層の一番下あたりにありますが、紫外線のUVAはそこまで到達し細胞のDNAを劣化させてしまいます。
それを防御しているのが角質層なので、ケラチンタンパク質の質が悪いと紫外線を通しやすくなり、髪が変質してしまうのです。
ケラチンタンパク質を増やす方法
薄毛や切れ毛、枝毛などが気になってきたら、以下の方法でケラチンタンパク質を増やしましょう。
食事でケラチンを構成する必須アミノ酸を摂取
ケラチンタンパク質を増やすには、食事から摂る方法が手軽です。
必須アミノ酸9種類は肉や魚、乳製品などに含まれていますが、その中でも特に多く含んでいる以下の食品を積極的に摂るようにしましょう。
これらには角質層のケラチンに多いセリンやグルタミン酸、アルギニン、髪に多いシスチンも多く含んでいます。
・肉類(豚肉・鶏肉・牛肉)
・魚介類(トビウオ、いわし、さば、するめ、まだら、にしん、かすのこ、鰹節、サバ節、タタミイワシ、するめ、かずのこ、すじこ、いかなご、しらす干し など)
・乳製品(チーズ)
・卵
・大豆製品(湯葉、高野豆腐、油揚げ、きな粉、豆乳 など)
・その他(麩、海苔、小麦タンパク など)
どちらかというと肉より魚、肉なら牛肉より豚肉か鶏肉のほうが必須アミノ酸を多く含んでいます。
また、小麦タンパクは非常に優秀なアミノ酸供給成分ですが、多くはハンバーグやソーセージなどのかさ増しやつなぎのために使われており、食品として一般的に販売されているのは麩くらいでしょう。
なお、小麦タンパクとはグルテンのことなので、グルテンアレルギーの場合は避けてください。
ケラチンタンパク質の合成を促進する成長ホルモンを増やす
成長ホルモンは思春期前期から後期にかけて最も多く分泌され、それ以降は一気に減ってしまいますが、60歳を過ぎてもゼロにはなりません。
その名の通り成長を助けるのが主な役割ですが、それ以外にもアミノ酸の吸収率をアップし、タンパク質をケラチンに再合成する作用を促進する働きがあります。
つまり、成長ホルモンの分泌量が多いほど頭皮や髪が健康になり、髪トラブルが少なくなる効果が期待できるのです。
成長ホルモンは主に睡眠中に分泌されますが、その中でも大量に分泌されるのが、入眠後30分~3時間の間です。
この時間にぐっすり眠っていると分泌量が増え、頭皮や髪に良い影響を与えるのです。
しかしこの時間帯に眠りが浅いと分泌量が減るため、できるだけ質の良い睡眠を取る必要があります。
そのためには脳がリラックスしていることが大切なので、寝るギリギリまでスマホやパソコンの操作をしたりせずに、入浴やストレッチなどで心身をリラックスさせましょう。
特に湯船に浸かるのは効果的で、15分ほどぬるめのお湯に浸かることで心身がリラックスし、血流も良くなるので身体が温まり、ぐっすり眠ることができるでしょう。
まとめ
日本人はタンパク質の摂取量自体は決して少なくなく、平成30年国民健康・栄養調査によると1日に必要な摂取量をどの年代でもほぼクリアしています。
しかし、その4~5割を植物性食品から摂取しているという統計が出ており、必須アミノ酸が不足している可能性が高いです。
最近どうも髪の毛が抜けやすい、細くなった気がするといったことがあったら、必須アミノ酸を多く含む食品を積極的に摂ることをおすすめします。