自律神経という言葉はよく知られています。
しかし、実際に私たちの体内でどういう働きをしているのか、上手く働かなくなるとどういうことが起こるのか、あまりよくわからない、という方が多いのではないでしょうか。
実は、女性と自律神経は非常に深い関係があり、抜け毛や薄毛にも影響を及ぼしているのです。
Contents
自律神経とは
まずは、自律神経がどこにありどういうものか、簡単に説明しましょう。
自律神経は全身に広がる神経
自律神経とは、意思と全く関係なく身体の機能をコントロールしている神経です。
各内臓や血管などの働きを調整しており、私たちが生きていられるのは自律神経が働いているからです。
自律神経は、頭部(脊髄と脳幹)から始まり首を通って背骨~腰~仙骨(骨盤の中央、背骨の一番下)までつながる神経と、そこから枝分かれして全身に広がる末梢神経からできています。
この神経には交感神経と副交感神経があり、それぞれが各臓器とつながっています。
交感神経と副交感神経が働く時間帯
交感神経と副交感神経は、1日のうちで活躍する時間帯が違います。
朝起きると交感神経が活性化し始め、お昼過ぎにピークとなり、それ以降活動が緩やかになっていきます。
大体18~19時頃になると副交感神経が入れ替わって活性化し、夜中にピークを迎え、早朝にまた交感神経と入れ替わります。
お昼過ぎにはほとんど活動しなくなり、それから徐々に活動が盛んになっていきます。
つまり、両方が同じように働くのは入れ替わりの早朝と18~19時頃だけで、それ以外はどちらかが優位になっています。
交感神経と副交感神経の働き
交感神経は「闘争と逃走の神経」と呼ばれ、脳や身体を活動的にし、緊張させます。
心拍数を上げ、血管を収縮させ、消化器の働きを抑制します。
また、ストレスを感じると時間帯に関わらず交感神経が活性化し、そのストレスに対処しようとします。
副交感神経は、心身をリラックスさせる働きがあります。
日中の緊張を解きほぐし、ぐっすり眠れるようにメラトニンという睡眠ホルモンを分泌します。
これによって睡眠中に不要な情報と必要な情報が整理され、心身のストレスが解消されるのです。
自律神経が乱れると
自律神経はお互いにバランスを取りながら、心身の健康を維持させています。
そのため、バランスが乱れると以下のようなことが起こりやすくなります。
・動悸や息切れ、めまい、耳鳴り
・心拍数が上がる/下がる
・血圧の上昇/降下
・のぼせ/手足の冷え/貧血
・手足のだるさ
・便秘/下痢
・頭痛、肩こり、腰痛
・イライラ、不安、感情の起伏が激しい
・不眠
・生理不順、PMS(月経前症候群)
・不妊
・記憶力や集中力の低下
自律神経が乱れる原因
自律神経は自分でコントロールすることはできません。
しかし、日常生活のちょっとしたことの積み重ねによってバランスが崩れてしまうのです。
精神的・肉体的ストレス
人間はストレスを感じると「闘争と逃走の神経」である交感神経が活性化し、それに対処しようとします。
ストレスには対人関係や仕事などの精神的なものもあれば、疲労や気候、気温、音などの肉体的なものもあります。
これらによるストレスを常に受けていると、夜になっても副交感神経が活性化しにくくなり、バランスが崩れてしまうのです。
不規則な生活
日光を浴びると交感神経が活性化し、暗くなると副交感神経が優位になるよう、人間は体内時計でセッティングされています。
しかし、夜勤や昼夜交代制の仕事、夜更かしなどで就寝・起床の時間が不規則になると、体内時計が狂ってしまいます。
すると自律神経も乱れやすくなるのです。
極端な偏食や栄養不足
食べるものも、自律神経に深くかかわっています。
例えば、亜鉛やカルシウム、マグネシウムはストレスを緩和させる働きがあります。
ビタミンCはドーパミンやアドレナリンといった、精神を安定させたり気分を明るくさせたりするホルモンの原料になります。
さらに、抗ストレスホルモンの副腎皮質ホルモンの合成にも関わっています。
このように、各栄養素によって精神の安定が維持されているため、何らかの栄養素が不足すると自律神経も乱れやすくなるのです。
女性ホルモン分泌量の低下との関係も
自律神経をコントロールしているのは、脳の視床下部という部分です。
しかし、ここは女性ホルモンの分泌をコントロールしている部分でもあります。
そのため、どちらかが乱れるともう一方も影響を受けてしまうのです。
例えば、女性ホルモンの分泌量は30歳前後がピークで、それ以降は加齢による卵巣の機能低下とともに分泌量が減っていきます。
しかし視床下部は女性ホルモンを分泌するよう、指令を出し続けます。
これが、自律神経にも影響を及ぼすのです。
更年期障害の様々な不快な症状は、これが原因です。
スマホの長時間使用による悪い姿勢
最近注目されるようになってきたのが、姿勢と自律神経の関係です。
前述したように、自律神経は首から背中にかけて通っています。
そのため、この部分が緊張すると自律神経が乱れやすくなるのです。
その原因となるのが、スマホの長時間使用です。
頭の重さは体重の10~15%あり、それを支えるために首の骨は若干湾曲しています。
しかし、画面を見るために常に前屈みになると、首に頭の全重量がかかってくるため、湾曲がなくなり真っ直ぐになってしまいます。
これをストレートネック(スマホ首)といい、首から肩にかけての筋肉が硬くなります。
すると自律神経が圧迫され、正常な働きができなくなるのです。
自律神経の乱れが薄毛を引き起こす原因
自律神経が乱れると、髪の毛の成長にも悪い影響を与えます。
それは、こんな原因によります。
食べた物が消化吸収されにくくなる
交感神経が活発な時は、胃腸の働きが悪くなります。
そのため、自律神経が乱れると食べた物が消化できなくなり、髪の毛に必要な栄養素が作られにくくなるのです。
血液が届きにくくなる
髪の毛は、毛穴の根元にある毛母細胞が毛細血管から栄養をもらうことで細胞分裂し、成長していきます。
交感神経が優位になる時間が長くなると、その間血管が収縮し血液の流れが悪くなります。
その結果毛母細胞が栄養不足を起こし、髪を健康に育てる力がなくなってしまうのです。
頭皮の毛細血管が消滅する
毛細血管は髪の毛の10分の1の太さしかないため、常に血液が流れていないと消滅してしまいます。
これを「ゴースト血管」といいます。
頭部の耳から上は毛細血管しかないため、血液が届きにくくなると消滅し、髪に栄養を届ける手段がなくなり、抜けてしまうこともあります。
女性ホルモンの分泌量が減る
髪の毛の寿命は、女性ホルモンの分泌量が多いほど長くなるといわれています。
そのため、自律神経が乱れると同じ視床下部にある女性ホルモンの分泌量が減り、髪が成長途中で抜けやすくなったり細く弱いままになったりしやすいのです。
自律神経を正常に戻し髪の毛の健康を助けるには
自律神経を正常にするには、日常のちょっとした見直しを続けることが一番効果的です。
ここでは簡単な方法をご紹介しましょう。
じっくり湯船に浸かる
交感神経が活発な時は血管が収縮しています。
そこで入浴で血管を広げてあげると、副交感神経が優位になってきます。
すると全身がリラックスして睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が始まり、1~2時間後にはぐっすり眠れるようになってきます。
毎晩は無理でも、週1~2回は38~40℃前後のお湯に15分程度浸かるようにしましょう。
サプリメントも利用し栄養バランスを取る
欧米化した近年の食事は、ビタミンやミネラルが不足しがちです。
できるだけ和食中心の、栄養バランスが良い食事を心がけましょう。
また、そこまで考えている時間がないという場合は、サプリメントの利用もおすすめです。
マルチビタミン・ミネラルのサプリなら、不足分を簡単に補うことができます。
ストレスを解消する
ストレスはそのままにするとどんどん溜まってしまいます。
自分に合った方法でストレスをできるだけ解消しましょう。
例えば湯船に浸かるのも良いですし、アニマルカフェに行って動物と触れ合ったり、山に登ったりするのも心が落ち着きます。
また、ストレッチやヨガのゆっくりとした動きは身体と心を解きほぐしてくれます。
首の負担を軽くする
スマホ首になっている人は、意識して身体を伸ばすことが大切です。
仕事中や家事中は時々首を前後左右にストレッチするだけでも、首への負担が軽くなって自律神経のバランスが整いやすくなります。
また、トイレに行った際に思い切り伸びをするなど、凝り固まった身体をほぐすことで血行も良くなります。
適度な運動をする
筋肉を動かすことで血行が良くなり、さらに副交感神経も活性化します。
散歩や軽いジョギングなど、できることから始めましょう。
早足で歩くだけでもOKです。
なお、激しい運動は交感神経を活性化し過ぎ、なかなかバランスが戻らなくなります。
息が切れない程度の運動をできれば毎日、少なくとも週3回行ないましょう。
まとめ
女性は男性に比べ、自律神経が乱れやすいといわれています。
これは、女性ホルモンが非常に繊細で分泌量が変化しやすいことや、男性より様々なストレスを受けやすいからです。
しかし、それが薄毛や細毛を招いて地肌まで透けるようになった、なんてことになったらつらいですよね。
自分に合った方法で、できるだけ自律神経を正常な状態に持っていきましょう。