昔は、髪の毛を美しくするといえばツバキ油でした。
しかし、ちょっとべとつきがちなのが難点で、特に髪が少ない人がつけるとボリュームがダウンしやすく、段々人気がなくなってきていました。
そんな折、「あんず油」がツバキ油に代わるものとして一部で知られるようになってきました。
まさに髪の毛のためのオイルといえる、あんず油について解説しましょう。
あんず油とは
あんず油は「あんず核油」「アプリコットオイル」「アプリコットカーネルオイル」「杏仁オイル」ともいい、杏子(あんず)の種の中の仁という部分から採れるオイルです。
杏仁を粉にしたものは杏仁豆腐の材料にもなっています。
杏子はバラ科サクラ属で、桃やアーモンド、プルーン、梅などと同じ品種群になります。
中国北部の河北省や山東省あたりが原産といわれ、日本では現在の愛媛や広島などで弥生時代から栽培されていました。
今では主に長野県や山梨県などで栽培されています。
あんず油の頭皮と髪への作用
硬くなった頭皮を柔らかくする
赤ちゃんと大人の頭皮の柔らかさを比べると、大人のほうが圧倒的に硬くなっています。
これは元々重力がかかりやすい上に、紫外線を一年中浴びていること、シャンプーの強すぎる脱脂力で乾燥しやすいことなどが原因です。
頭皮が硬くなるとその下にある毛細血管が圧迫され、血流が悪くなります。
すると髪に栄養が届きにくくなるため、成長不良になり、薄毛や抜け毛になりやすいのです。
あんず油には保湿作用と皮膚を柔らかくする作用があるので、血管の圧迫がなくなり、充分な栄養が頭皮に届くようになります。
頭皮の新陳代謝を促進する
紫外線が頭皮に当たると、頭皮の角質層や真皮層に浸透してしまいます。
角質層にはセラミドや天然保湿因子などの保水・保湿成分が、真皮にはコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸など頭皮の柔軟性やハリを保つ成分があり、これらが紫外線によって変質してしまうのです。
すると頭皮は正常な新陳代謝ができなくなるため、古い角質が残ってフケやかゆみの原因となります。
また、フケが毛穴内に入り込むと髪が真っ直ぐ伸びることができず、クセ毛やうねり毛になりやすくなります。
あんず油には皮膚の新陳代謝を促す働きがあります。
頭皮のターンオーバーサイクルが正常になり、頭皮環境が良くなるので、髪にハリやコシが出てくるのです。
浸透力が高くべとつかない
髪に良いといわれてきたツバキ油がべとつきやすいのは、オレイン酸が約85%と多いからです。
熟したリンゴの表面がべとつくのも、オレイン酸が多く分泌されるからなのです。
べたつくヘアオイルはほこりを吸いつけてしまうので、さらに髪がべったりしやすくなります。
それに対しあんず油は約58%で、比較的さらっとしています。また、浸透力が良いので頭皮や髪につけてもいつまでも油っぽさが残ることがありません。
髪のダメージを補修する
髪の毛の表面にはキューティクルがあり、中にあるタンパク質や脂質、水分が漏れ出すのを防ぐ働きがあります。
しかし、キューティクルは摩擦に弱く、シャンプーやブラッシングの際に剥がれたり穴が開いたりしてしまいます。
一旦破壊されたキューティクルは再生することはないため、そのままにしておくとどんどん髪が細く弱くなり、枝毛や切れ毛の原因となります。
あんず油は髪の表面を薄いベールで覆い、キューティクルのダメージを食い止めてくれます。
さらに、オイル成分によって摩擦が起きにくくなるため、静電気の発生を抑えて髪のダメージが広がるのを防いでくれるのです。
紫外線の影響を防ぐ
植物オイルには、酸化しやすいものとしにくいものがあります。
酸化しやすいものは紫外線や空気に触れると悪臭の原因となったり、頭皮を荒らしたりしてしまいます。
また、過酸化脂質に変化して毛穴から浸透してしまうと、炎症を起こして毛母細胞の機能を低下させてしまうことがあります。
その点、あんず油には抗酸化作用のあるビタミンEが含まれているので酸化しにくく、髪や頭皮を紫外線から守ってくれます。
また、浸透性が高いため毛穴内に詰まることがなく、髪の成長の障害となることがありません。
血行を良くする
紫外線や外的刺激、シャンプーなどによって硬くなった頭皮は、その下にある毛細血管を潰してしまうため、血流が悪くなります。
すると髪に栄養が届きにくくなるため、髪の成長が止まってしまいます。
そこであんず油を頭皮に塗ると、ビタミンEの働きで血管が拡張され、血流を改善する作用があります。
また、紫外線によってできた過酸化脂質が血中に入り込むのを防ぎ分解する働きもあり、血液をサラサラに保ちます。
その結果、頭皮に充分な血液が届くようになるため、髪の毛の成長が促進されるのです。
あんず油で頭皮と髪をケアする方法
このように、あんず油は頭皮と髪にとても良い効果を与えてくれます。そこで、より効果を高めるために、こんな使い方をお勧めします。
ヘアトリートメント
シャンプーしてタオルドライした後、手のひらに薄く伸ばし、毛先中心に髪全体に伸ばします。
その後でドライヤーをかけると熱によるダメージを軽減してくれる上に、クセやぱさつきを抑えてくれます。
つけ過ぎると重くなってしまうので、最初は数滴程度からやってみて、自分の髪質や状態に合った量を見つけましょう。
オイルマッサージ
手のひらにあんず油を少量ずつ取り、乾いた状態の頭皮にやさしく揉み込みます。
その後、両手の指を頭皮に当てて固定し、その場で小さく円を描くようにくるくる回します。
こめかみから後頭部へ、最後に頭頂部まで何回かに分けてマッサージしてください。
それが終わったらラップやシャワーキャップで包み、10~15分程度置いてからシャンプーしましょう。
週1~2回程度が目安です。
ヘアパック
手のひらに100円玉程度のあんず油を取り、両手に広げてからシャンプー前の少し濡らした髪の毛先を中心に丁寧に髪につけます。
その後シャワーキャップやタオルなどで包み、15分程度置きます。湯船に浸かりながら待つとオイルがより浸透します。
お湯ですすいでからシャンプーして洗い流します。
ダメージへアの場合は週2回程度、そうでなければ週1回程度が良いでしょう。
あんず油はお肌の若返りにも使える
実は、あんず油は顔や身体に使っても良い作用があります。いくつかご紹介しましょう。
首などのイボを取る
あんず油は、加齢とともに首などにできる小さなイボを取るためによく使われます。
加齢によるイボは、肌の皮脂分泌量低下によって皮脂膜ができにくくなり、紫外線や乾燥によって皮膚が老化してできるとされています。
あんず油に含まれる脂肪酸は、皮膚の再生を促す作用があります。使い続けると徐々にイボが小さくなったりポロっと取れたりするといわれています。
肌の若返りを助ける
あんず油に含まれる脂肪酸は5種類あります。
・オレイン酸、リノール酸…水分の蒸発を防ぎ、乾燥から守る
・ステアリン酸…肌に柔軟性とみずみずしさを与える
・パルミトレイン酸…角質を柔らかくし新陳代謝を促す
・パルミチン酸…皮膚を健康に保つビタミンAの働きを助ける
さらに、若返りのビタミンと呼ばれるビタミンEも含まれています。
これらの成分の働きで、肌の若返りが期待できます。
まとめ
あんず油は新しいヘアケア・スキンケアオイルとして注目されている成分です。
オイルはほのかに甘い杏子の香りがして、それだけでもリラックスできます。
さらに様々な効能・効果があるのですから、使わない手はありません。
ドラッグストアや通販で購入できますので、薄毛やダメージへアにお悩みの方は、ぜひお試しください。