出産後急に髪が抜けるようになってショックを受けた、という女性は少なくありません。
しかしこれは一時的なもので、特に心配する必要はありません。
ところが、妊娠中から髪がどんどん抜け、薄毛になってしまう女性もいます。
中には地肌が透けるくらいまで髪が抜けた、という人も。
妊娠中に髪が大量に抜けてしまう原因と対策について、解説します。
Contents
女性の身体は妊娠中に大きく変化する
まずは、妊娠中の女性の身体がどのように変化するのか、簡単に説明しましょう。
女性ホルモンの分泌量が劇的に増える
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがあります。
それぞれの働きは、以下のようになります。
<エストロゲン>
・受精卵の着床をサポート
・妊娠に適した身体を作る
・肌のハリを保つ
・新陳代謝を促進する
・髪の寿命を伸ばし健康を保つ
・コレステロール値を下げる
<プロゲステロン>
・妊娠を維持する
・皮脂分泌量を増やす
・新陳代謝を遅くする
・水分を溜め込む
妊娠中はエストロゲンの血中濃度が最大で100倍、プロゲステロンは約15倍に増えます。
この増加によって胎児が安全に成長し、出産できるのです。
エストロゲンには髪の寿命を伸ばす働きがある
女性の髪の寿命は4~6年程度といわれており、その大半が成長期です。
成長期が終わると2~3週間で髪の根元にある毛球部が小さくなり(退行期)、その後数か月かけて毛根部の活動が停止していきます(休止期)。
その髪が抜ける時にはすでに同じ毛穴に新しい髪が生まれていて、それが成長すると共に寿命のきた髪を押し出し、抜けていきます。
この一連のサイクルを延長させるのが、大量に分泌されるエストロゲンです。
エストロゲンによって成長期が伸び、本来であればすでに寿命に来ているはずの髪が成長を続け、抜けなくなるのです。
よく妊娠中は抜け毛が減るといわれるのは、このためです。
出産後髪が一気に抜ける理由
出産後に髪が抜けるのは、エストロゲンの量が一気に減るためです。
このホルモンは出産後1週間以内に、一気に妊娠前の量に戻ります。
すると寿命が伸ばされていた髪の毛が一気に退行期に入り、2~3月経つと抜け始めるのです。
つまり、何らかの問題があって「抜け毛が増えた」のではなく、抜けるべき髪の毛が抜けた、正常な現象なのです。
この状態は人によって違いますが通常3ヶ月~1年程度続き、その後抜け毛が落ち着いて妊娠前のヘアサイクルに戻っていきます。
ただし、人によっては1年経っても抜け毛が止まらないケースもあります。
女性ホルモンの分泌量は決まっており、一生涯でティースプーン1杯程度といわれています。
そのため、高齢出産や二人目・三人目出産になるとホルモンの残量が少なくなっているため、髪の寿命が短くなってしまうことがあります。
また、産後のストレスなども女性ホルモンの分泌に影響を及ぼし、髪が抜けやすくなります。
なぜ妊娠中に抜け毛が増えるの?5つの原因と対処法
エストロゲンの分泌量が多くなるはずの妊娠中に、抜け毛が増えてしまうケースが増えています。
代表的な5つの原因と対処法について解説しましょう。
原因1:ヘアサイクルの乱れ
女性ホルモンの分泌量が劇的に増えるのは、大体妊娠20週前後からです。
特に急激に増えるのはエストロゲンですが、20週まではプロゲステロンの方が多いため、妊娠4~5ヶ月辺りまではエストロゲンの働きが抑えられてしまいます。
するとヘアサイクルが乱れ、抜け毛が多くなるのです。
さらに、プロゲステロンには皮脂分泌量を増やす働きがあるため、毛穴内に詰まり雑菌が繁殖しやすくなります。
また、皮脂が紫外線を浴びて過酸化脂質に変化し、毛根部にある毛母細胞にダメージを与えてしまうこともあります。
このような原因によって、抜け毛が増えてしまうのです。
<対処法>
女性ホルモンの分泌量の変化は、妊娠から出産まで母体と胎児を守るために起こるものです。
そのため、この原因に関しては無理に改善しようと思わず、「そういう時期だから仕方ない。20週を過ぎれば抜け毛は徐々に落ち着いてくるはずだから」と前向きに考えましょう。
原因2:栄養不足
早い人は妊娠4週頃から、つわりが始まります。
赤ちゃんのために食べなくては…と思ってもどうしても栄養価が高いものが食べられなくなる人は少なくありません。
何とか口にできるのが炭酸水、フルーツ、野菜、ポテトフライ、食パン、ラーメン、うどん、そうめんといった、タンパク質がほとんど含まれていないものが多く、栄養失調になってしまいます。
髪の毛の主成分はタンパク質ですから、摂取不足になると髪の成長が止まり、抜けやすくなるのです。
さらに、髪の毛のタンパク質はケラチンといい、食べたタンパク質を一旦アミノ酸に分解した後再合成されます。
この過程で必要となるのが亜鉛やビタミンB群、ビタミンCなどですが、これらの栄養素は胎児の成長にも不可欠です。
身体は胎児のほうを優先するため、母体に送られなくなってしまい、ケラチンタンパク質が作られなくなってしまうのです。
<対処法>
つわりの間は、無理に食べることを考えないようにしましょう。
本当に何も食べられないようなら入院して点滴が必要ですが、食べられるものがあるならそれで良しとしてください。
もし食べられるようであれば、バナナや豆腐類がおすすめです。
どちらも非常に栄養価が高く、しかも消化が良いので胃腸の負担になりません。
つわりがおさまったら、タンパク質やビタミン、ミネラルを中心に摂りましょう。
チーズや牛乳、豆乳、ヨーグルトにはタンパク質やミネラルが豊富ですし、根野菜やナッツ類はビタミンと食物繊維が多く、便秘解消にうってつけです。
原因3:お手入れ不足
胎児が育ってくると、シャンプーするのが苦しくなってきます。
するとどうしてもすすぎに時間をかけられず、シャンプー剤が頭皮に残りやすくなります。
シャンプーの泡には頭皮の皮脂やほこりが吸着しているので、それが頭皮についたままになると頭皮環境が悪くなり、かゆみや悪臭、フケ、抜け毛などの原因となるのです。
<対処法>
シャンプー時に少しでも楽な姿勢になるには、バスチェアがおすすめです。
あまり低いものはどうしても前屈みになりやすいので、自分に合った高さのものを選びましょう。
また、シャンプー液を使用する回数を減らし、代わりにドライシャンプーを使うのも手です。
スプレータイプやパウダータイプ、フォームタイプなど色々ありますので、自分に合ったものを見つけましょう。
なお、妊娠中は肌質が変わり、これまで使っていたシャンプーが合わなくなることがあります。
その場合は、刺激の少ないアミノ酸系シャンプーがおすすめです。
原因4:睡眠不足
妊娠中、特に後期になるとお腹の圧迫感や胎動によって、睡眠不足になりがちです。
睡眠中は髪を修復する成長ホルモンが分泌され、髪の成長を助けてくれます。
しかし、睡眠が浅くなると分泌量が非常に少なくなるため、髪や頭皮のダメージがどんどんひどくなり、抜け毛や切れ毛が増えてしまうのです。
また、妊娠中は体温が上がるため寝苦しさを感じて熟睡できない場合や、運動量が減って疲労が少なくなった場合なども、睡眠不足を引き起こします。
<対処法>
お腹が苦しい場合は、抱き枕を使うと楽になります。
また、日中軽い運動をしたり、安眠作用のあるカモミールやオレンジブロッサム、レモンバーム、ラベンダーのお茶や精油に助けを借りるのも良いでしょう。
また、入浴するのも熟睡効果があります。
38~40℃前後のぬるめのお湯に10分程度半身浴すると副交感神経が活性化し、血行が良くなって全身がリラックスするのです。
ただ、貧血を起こす危険性もあるので、少しでも気分が悪くなったらすぐに上がり、休みましょう。
また、入浴はできるだけご家族がいる時間帯にしたほうが安心です。
原因5:ストレス
前述したように、妊娠初期から中期にかけては、女性ホルモンのうちプロゲステロンのほうが多くなります。
これは生理前と同じ状態で、イライラしたり落ち込んだりと、精神が安定しなくなり、自律神経のバランスが乱れてしまいます。
さらに出産や育児のことを考えすぎて、ストレスが増えてしまうこともあります。
自律神経と女性ホルモンは脳の視床下部という同じ部分でコントロールされているため、エストロゲンの量が減って髪に悪影響を及ぼすことがあるのです。
<対処法>
妊娠中の抜け毛や薄毛の最大の原因が、ストレスです。
これを解消するためには、妊娠・出産に関する不安や疑問は経験者に聞いたり、各自治体の保健センターに相談すると良いでしょう。
また、ヨガやストレッチ、ウォーキングなどで身体を動かしたり、プレママのサークルで友達を見つけたりするのも、ストレスの解消に役立ちます。
特に妊娠初期のストレスは血行を悪くし、胎児の成長に影響を及ぼす可能性が指摘されています。
自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
まとめ
妊娠中は体質が変化しやすく、人によっては抜け毛の増加や肌荒れなどが起きやすくなります。
しかしほとんどは一過性のものですから、焦らずストレスを溜めないようにし、食事や運動などできそうなことをやっていきましょう。