更年期障害と聞いて、どんなイメージが浮かぶでしょうか。
50歳前後の閉経前後に起こる、イライラや発汗、ほてり、めまいなどが代表的だと思います。
しかし、近年このような症状が20代30代の女性にも増えています。
しかも、若いだけに更年期障害だとは夢にも思わず、放置して悪化させてしまうことも。
するとその一つとして、抜け毛や薄毛になってしまうこともあるのです。
若い女性に増えている「若年性更年期障害」について解説します。
更年期障害のメカニズム
まずは簡単に、更年期障害のメカニズムについて説明しましょう。
女性ホルモンは脳の視床下部の指令で作られる
女性ホルモンは卵巣で作られていますが、その指令を出している大元は脳の視床下部です。
最初に視床下部がその下の下垂体に「性腺刺激ホルモン放出ホルモン」を分泌します。
すると下垂体は「卵胞刺激ホルモン(FSH)」と「黄体形成ホルモン(LH)」を出します。
それが卵巣に伝わることで、女性ホルモンが分泌されるのです。
更年期障害は自律神経の乱れが原因
加齢とともに卵巣が老化すると、女性ホルモン生成機能が失われていきます。
しかし、それがわからない視床下部はどんどん性腺刺激ホルモン放出ホルモンを出し、ホルモンを分泌するよう指令を出し続けます。
これが繰り返されると、下垂体から分泌されるFSHとLHが増え過ぎてしまい、視床下部が状況を理解できなくなってしまうのです。
そこで問題となるのが、視床下部がコントロールしているのが女性ホルモンだけでなく、自律神経もだということです。
パニックを起こした視床下部は自律神経にも影響を及ぼし、様々な不快な障害を生み出してしまうのです。
つまり、更年期障害の原因は女性ホルモンの減少そのものというより、自律神経の乱れが大きな原因となっているのです。
若年性更年期障害とは?
若年性更年期障害は、その名の通り若いのに更年期障害のような症状が出ることをいいます。
近年20代~30代の女性に増えているのです。
若年性更年期障害の症状
基本的には、前述した更年期障害と同じ症状が出ます。
また、骨量が減少して骨粗しょう症になったり、生殖器の乾燥や委縮が起きたりします。
抜け毛、薄毛などもよく見られる症状で、中には頭皮が透けて見えてしまうほどになってしまう例も。
さらに、胃腸の調子が悪くなり食欲不振になると、身体は生命の危機を感じて出血を回避しようとします。
その結果、生理が規則的に来なくなったり、止まったりしてしまうこともあります。
更年期障害で起こる症状
更年期障害は、つまり自律神経の乱れです。
そのため、以下のような症状が起こりやすくなります。
・精神的症状…イライラ、精神不安定、頭痛、めまい、不眠 など
・身体的症状…動悸、異常発汗、むくみ、冷え、ホットフラッシュ、喉の渇き、皮膚の乾燥、ドライアイ、便秘、下痢、胃もたれ、胸やけ、肩こり、首こり、腰痛、関節痛、震え、痺れ、尿失禁、生理不順 など
このように非常に症状は多く、一度にいくつも起こることもあれば、全く出ない日もあります。
また、気づかないうちに更年期障害が終わってしまう人もいれば、10年以上苦しむ女性もいます。
若年性更年期障害を放置すると
若年性更年期障害は、多くの場合加齢による女性ホルモン分泌量の低下が原因ではありません。
自律神経の乱れによって、卵巣の機能が低下するために起こると考えられています。
そのため、自律神経の乱れを整えれば、症状は消えていきます。
しかし、放置すると症状が悪化することもあり、早期閉経してしまうこともあります。
なお、若年性更年期障害は、初潮が早かったために起こる場合もあります。
排卵する卵子の数は遺伝で決まっているといわれ、生理が早く始まればその分早く卵子がなくなり、早期閉経となってしまうのです。
この場合、放置すると不妊となるため、不妊治療が必要となってきます。
若年性更年期障害の6つの原因
若年性更年期障害の原因は、大きく分けて6つあります。
①ストレス
自律神経を乱す最も大きな原因が、ストレスです。
人間はストレスを感じると交感神経が活性化するため、ストレスが多いほど交感神経が優位になる時間が長くなります。
しかし、交換神経には血管を収縮させてしまう働きがあるため、全身が栄養不足になり、様々な不調が起こりやすくなるのです。
さらに、自律神経が乱れれば女性ホルモンの分泌量も減るため、更年期障害と同じような症状が出てしまいます。
②無理なダイエットや偏食
無理なダイエットや偏食による体重の急激な減少も、自律神経を乱し若年性更年期障害の原因となります。
女性の場合、身体に支障が出ない減量は1ヶ月3キロ程度といわれています。
この目安を大幅に越える減量をすると、内臓の働きや代謝をコントロールしている自律神経が乱れてしまうのです。
さらに、無理なダイエットや偏食を長期間続けると、髪の主成分のタンパク質や、食べたタンパク質を髪のケラチンに変化させるのに必要な、亜鉛やビタミンB群も不足します。
すると、薄毛や細毛、抜け毛などの原因となるのです。
③睡眠不足
睡眠不足も、自律神経を乱す大きな原因です。
睡眠中は脳が日中受けた情報を整理し、不要なものを捨てるという作業を行なっています。
しかし睡眠不足になるとその作業を充分できなくなるため、脳内に不要な情報がどんどん蓄積されてしまいます。
これがストレスとなり、自律神経のバランスが崩れやすくなるのです。
④不規則な生活
私たちの身体には体内時計という、生体リズムを刻むメカニズムがあります。
自律神経の交感神経と副交感神経の切り替えも、体内時計によって決まっています。
朝日を浴びると交感神経が活性化し、夕方になると副交感神経が活性化するようになっているのです。
しかし、夜更かしや交代制勤務などで就寝・起床の時間が不規則になると、体内時計がうまく働かなくなります。
その結果、自律神経も乱れてしまうのです。
⑤スマホやゲーム機などLED機器の長時間使用
最近注目されるようになったのが、スマホなどの長時間使用による姿勢の悪さと自律神経の関係です。
自律神経は首の後ろから背骨を通っているため、前屈みの姿勢を長時間取っていると頭の重みが首にかかり、筋肉が緊張して硬くなります。
すると筋肉の下の自律神経が圧迫されてしまうのです。
20代30代はスマホの使用時間が長い人が多いため、若年性更年期障害が起こりやすくなる可能性があります。
⑥ハードな運動や仕事
よく、ハードな運動をする女性選手の生理が止まる、といわれます。
これは運動によって交感神経が活性化し過ぎ、男性ホルモンの働きが強くなるからです。
同様に、仕事で男性と肩を並べて切磋琢磨している女性も、常に精神が緊張しているため交感神経が優位になり、男性ホルモンが増えます。
すると女性ホルモンの分泌量が抑えられてしまい、更年期障害のような症状が出るのです。
若年性更年期障害を改善するには
この疾病は、病院でホルモン補充などの治療を受ければほぼ改善します。
しかし、むやみにホルモン注射をすることは、身体の負担になります。
病院に行く前に、以下の方法を試しましょう。
・栄養バランスの取れた食事をする
女性ホルモンの材料となるのは、コレステロールです。
そのため、良質な動物性タンパク質を充分摂る必要があります。
また、植物性タンパク質の大豆製品には、女性ホルモンに似た作用をするイソフラボンが含まれているため、こちらも積極的に摂りましょう。
さらに、女性ホルモンの合成を促進するビタミンEも大切です。
ビタミンEはナッツ類や植物油、魚介類、かぼちゃ、菜の花、卵などに多く含まれています。
ダイエットも大切ですが、それで若年性更年期障害となり、心身の不調や薄毛・抜け毛に悩まされては元も子もありませんよね。
・ストレスを緩和させる
自律神経を乱す最も大きな原因となるストレスは、できるだけ解消するようにしましょう。
そのためには、適度な有酸素運動や質の良い睡眠で副交感神経を活性化させ、交感神経を鎮めることが大切です。
また、脳を興奮させるスマホなどLED機器の使用はできるだけ短くし、特に就寝前2時間程度は避けるようにしてください。
また、入浴もお勧めです。
38℃~40℃前後のお湯に15~20分浸かることで、血管が拡張して副交感神経が活性化し、心身がリラックスするのです。
まとめ
最近貧血でもないのに動悸やめまいがしたり、急にかーっと暑くなって汗が噴き出たり、生理が不順になってきたり、抜け毛が増えたり…そんな症状が出たら、若年性更年期障害かもしれません。
今回ご紹介した症状や思い当たる原因があるようなら、食事や運動、睡眠、ストレス解消など、できることからやってみてください。
しかし数か月続けても解消しない場合は、婦人科の受診をすることをお勧めします。