近年注目を浴びている「グルテンフリー」。
よくわからないけれど、色々な製品が販売されているということはグルテンは身体に良くないの?と疑問を持っている人は少なくないでしょう。
そこで今回はグルテンがどういうものか、グルテンが危険といわれているのはなぜか、そして意外な落とし穴についても解説しましょう。
グルテンとは
小麦粉には5%~15%程度のタンパク質が含まれていますが、そのうち約8割が弾力のある「グリアジン」と、粘着力と伸びがある「グルテニン」です。
小麦粉に水を混ぜて練るとこの2つが合わさり、弾力・粘着力・伸びのある「グルテン」ができます。
また、小麦粉以外に大麦やライ麦にも含まれています。
グルテンの特徴によって、もちもちのうどんやパスタ、ふわふわなケーキなどが作れるのです。
その他、その特徴を生かして加工肉などのつなぎや乳化剤、結着剤などにも使用されています。
グルテンフリーが良いとされる理由
グルテンフリーは、特にアメリカで盛んです。
これは、元々アメリカ人は小麦粉の消費量が多く、1人当たりの小麦粉消費量が1年で約70kgと、日本人が約30~35kgなのに対し2倍以上摂取していることから来ています。
小麦食がメインの欧米で、小麦粉の摂取によって体調不良が増えていることから研究が進み、グルテンが様々な疾病を引き起こす原因となることがわかってきたのです。
セリアック病
セリアック病は、自己免疫疾患の一種です。
グルテンは体内でタンパク質→ペプチド(アミノ酸数十個の集合体)→アミノ酸へと分解されますが、中にはペプチドからアミノ酸に分解する酵素の力が弱い人がいます。
その場合、通常ペプチドは排出されてしまうのですが、排出されず腸内にとどまっていると、免疫システムがそれを異物と判断し、小腸の粘膜にダメージを与えてしまうことがあります。
これをセリアック病といいます。
セリアック病の症状には、腹痛、膨満感、便秘、下痢、貧血、栄養失調、倦怠感、神経障害、関節痛などがあります。
一旦発症したら、グルテンフリーを続けないと、どんどん症状が悪化してしまいます。
これまで、セリアック病は遺伝との関係が大きいといわれてきました。
しかし近年、遺伝以外で発症する人が増えています。
2019年の調査では、アメリカでは全人口の0.5%~1.0%程度、ヨーロッパでは0.3%~1.1%程度といわれており、今後も増える傾向にあります。
なお、今のところ日本人の統計は公表されていませんが、2,000人に1人程度(0.05%程度)ではないかといわれており、欧米と同様今後増えるだろうと推測されています。
乳幼児期や幼少期に米よりパンやパスタを食べて育った子供が、大人になってから発症する例が多いのです。
小麦アレルギー
小麦に含まれるタンパク質に反応してしまうのが、小麦アレルギーです。
小麦タンパク質にはグリアジンとグルテニンのほか、アルブミンやグロブリンなどが含まれています。
これらに反応が出て、特に消化器系にダメージを与えます。
アレルギーには即時型と遅延型があり、即時型の場合食べてすぐに喉のイガイガやかゆみ、じんましん、くしゃみ、吐き気、下痢、呼吸困難などが起こり、アナフィラキシーショックなど重篤な症状が出る場合もあります。
遅延型は即時型ほど強い症状は出ませんが、頭痛、倦怠感、肌荒れ、ニキビ、発疹、抑うつ書状などが起こります。
グルテン過敏症(不耐症)
グルテンを完全に消化するための酵素を持っていない、あるいは不足している人が起こるとされているのが、グルテン過敏症(不耐症)です。
セリアック病よりはずっと軽く、小麦製品を食べると全身がだるくなる、頭痛やめまいがする、胃もたれがする、便秘や下痢を起こすといった症状が現れます。
また、放置するとセリアック病に進行する可能性があるとの研究発表もされています。
欧米ではこの疾患を持っている人が多く、アメリカは全人口の3.0%~6.0%、ヨーロッパでは0.5%~13.0%程度といわれています。
しかし、はっきりした症状ではないため、自分が過敏症だと気づいていない人が非常に多いといわれ、それは日本人も例外ではありません。
このように、小麦や大麦、ライ麦のグルテンが様々な病気の原因と考えられるようになったため、グルテンフリーが推奨されるようになったのです。
グルテンフリーにしたほうが髪の毛にも良い?
これまで見て来たように、欧米ではグルテンによる病気が増加しており、小麦粉の消費量が年々増えている日本人も同じ道を歩む可能性があります。
では、グルテンと髪の毛の関係はどうなのでしょうか。
小腸が傷つくと栄養が吸収できなくなる
小腸は、食べたものを栄養素に分解し、それを内壁から吸収し全身に送っています。
そのため、もし小腸がダメージを受けるとせっかく食べたものが栄養として身に付かず、髪の毛の成長にも支障をきたしてしまいます。
実際、小麦粉の摂取を控えたら髪にハリやコシが出て来たと感じる人は少なくありません。
これまで小麦粉を使用した食品を食べて体調不良を起こしたことがある人は、グルテン過敏症の可能性がありますから、避けた方が身体にも髪の毛にも良いでしょう。
グルテンフリー=小麦粉フリーで安全性が高まる
グルテンフリーの小麦粉は全く粘りがなく、膨らむこともありませんから、日本でグルテンフリーといえば小麦粉を使用したものはほとんどありません。
日本で使用されている小麦粉の約9割が外国産です。
それらは生育中には農薬を、船便で輸出される際には防腐剤をたっぷりかけられています。
基準値以下とされているものの、それを毎日摂取していれば何らかのトラブルが起きてもおかしくありません。
実際、パン職人には小麦アレルギーを発症する人が少なくないようです。
厚労省によると、日本人の1/3はアレルギー体質だといわれ、現在アレルギー症状がなくてもいつ発症するかわかりません。
アレルギー症状は頭皮に出る場合もあり、帝京大学溝口病院皮膚科によると、かゆみやフケ、抜け毛などの頭皮トラブルの原因が、食物アレルギーによるものだったという場合が少なくありません。
グルテンフリー=小麦粉フリーはアレルギーの危険性を減らすためには良いといえるでしょう。
小麦粉のタンパク質は必須アミノ酸が不足
グルテンは植物性タンパク質の一種ですが、小麦粉のタンパク質はそれほど質が良くありません。
必須アミノ酸は9種類あり、それをすべてバランス良く含んでいるのが動物性タンパク質で、小麦粉のタンパク質は9種類のバランスが動物性タンパク質より悪いのです。
そのため、グルテンだけでなく小麦粉自体、あまり食べ過ぎるとタンパク質が主成分の髪の毛が細く弱い髪の毛になってしまう可能性があります。
グルテンフリーに取り組む前に知っておきたいこと
グルテンが含まれていればすべて悪いとは限りませんし、グルテンフリーだから絶対に安全ともいえません。
ここでは、知識として知っておいていただきたいことをまとめました。
国産小麦なら大丈夫というケースも
日本でも、わずかながら小麦粉を生産しています。
国産小麦はポストハーベストの心配がなく、より安全性が高くなっています。
市販のパンやパスタ、お菓子など外国産小麦粉製品は体調を崩すが、国産なら問題ない、という人も結構いるのです。
小麦粉を完全に絶つのは無理、という方は、国産小麦を使用した市販品を購入したり、手作りしたりしてみてください。
米粉なら安全とは限らない
小麦粉の代用品によく米粉が使われますが、米粉アレルギーがあるのをご存知でしょうか。
米粉ばかり使っていると感受性が高くなり、アレルギー反応が出てしまうケースが増えているのです。
また、その原因がポストハーベストの場合もあります。
小麦粉の代用には色々なものを使いましょう。
小麦粉の代用は米粉だけではありません。
そば粉、大豆粉、おからパウダー、アーモンドプードル、ココナツパウダー、タピオカ粉など、色々なものを工夫して使いましょう。
まとめ
すでに小麦粉を摂取して何らかの症状を自覚している場合は、グルテンフリーの食品を中心とした食生活に切り替えたほうが良いでしょう。
しかし、そうでない場合はあまり神経質になり過ぎても、ストレスで逆効果になる場合があります。
普段の食事であまり小麦粉を取り過ぎないよう気を付けることから始め、体調の変化を見ながら調節してみてはいかがでしょうか。