今や、薄毛で悩むのは男性だけではありません。
近年、多くの女性が、しかも若い頃から薄毛や抜け毛に悩んでいます。
そして、それに伴い薄毛治療の病院も増えています。
しかし、そこで問題になるのが治療費。
専門クリニックが増えたのは良いけれど、ほとんどが自費なので、続けるとかなり高額になってしまうことも。
保険対応で診てもらうことはできないのでしょうか。
薄毛治療が保険対応でできない理由
「女性」「薄毛」といった単語で検索すると、女性用の薄毛治療専門クリニックがたくさん見つかります。
こういったクリニックのほとんどはちゃんとした医療機関で、治療してくれるのも医師免許を持った方です。
では、なぜそういったクリニックで、薄毛に対して保険対応してくれないのでしょうか。
薄毛は基本的に病気ではない
その理由は、薄毛は基本的に「病気ではない」からです。
加齢にともなって起こる薄毛や抜け毛は病気ではなく「自然現象」と捉えられており、それを食い止めたり改善させたりすることは、医療ではなく「美容」の一種と考えられているのです。
さらに、薄毛に悩む人は世界中にいるものの、生命維持には関係ない問題であることから、医学的な研究は最近ようやく進んできた段階です。
ましてや一つの薬が保険対応になるには非常に多くの臨床研究や試験が必要なこともあり、製薬会社は膨大な金額を費やさなければなりませんから、なかなかそこまではできません。
そういった理由により、薄毛治療を保険で対応することは困難なのです。
専門クリニックで使用している治療薬の多くは海外から輸入したもの
さらに、専門クリニックで扱う治療薬の多くは、海外のものです。
もちろん、それらは海外で臨床試験を行ない効果が確認されているものですが、日本で保険対応することは認められていません。
そのため、各クリニックが自費で個人輸入し、それを治療に使用しています。
また、各クリニック独自開発の治療薬もありますが、開発自体膨大な金額がかかっています。
治療費が高くなるのは、そういった理由もあるのです。
なお、最近は一般の皮膚科でも海外の治療薬を扱うところが出て来ていますが、当然こちらも個人輸入で手に入れたものです。
そのため、やはり治療費は高額になります。
しかも、皮膚科は薄毛治療専門クリニックと違い、薄毛に関する知識がそれほど豊富ではありません。
たとえ同じ薬を使っても、それ以外の治療方法などに差が出てしまうため、あまり効果が期待できないといわれています。
女性の薄毛を保険対応で治療してもらうのは無理?
このように、薄毛治療は保険対応してもらうことは難しいとされています。
現在、女性の薄毛に効果があるといわれている治療薬に「パントガール」があります。
ドイツで開発され世界数十か国で使用されており、日本でも女性用の薄毛治療クリニックで扱うところが増えていますが、当然これも自費になります。
しかし、男性の薄毛(AGA)が男性ホルモンの分泌量の変化という、加齢によってあらがえないものであるのに対し、女性の場合は以下のように様々な原因があります。
・加齢
・ホルモンバランスの乱れ
・食生活の乱れによる栄養不足
・運動不足による血行不良
・睡眠不足
・ストレス
そのため、「薄毛」そのものを治療することは保険対応ではできませんが、「薄毛を引き起こす原因」を改善させることは保険で可能なのです。
こんな症状にはこんな病院で
これからご紹介するような症状がある場合は、まずは病院で治療しましょう。
保険対応が可能で高額になることはありませんし、いつの間にか抜け毛が減っていたり、髪が太くなっていたりする可能性が充分にあるのです。
頭皮トラブルがある → 皮膚科
女性に多い頭皮トラブルには、フケやかゆみ、炎症、湿疹などがあります。
特に多いのがフケで、乾性フケと脂性フケの2タイプに分かれます。
乾性フケの場合は頭皮の乾燥によるもので、頭皮を守る皮脂の分泌量が減っています。
すると紫外線から頭皮を守ることができないため、炎症(日焼け)を起こしやすくなるばかりでなく、髪を産み育てる毛母細胞まで傷つけてしまいます。
また、脂性フケの場合、毛穴内の皮脂腺から過剰な皮脂が分泌されている状態です。
雑菌が繁殖しやすいため、かゆみや炎症が起こりやすくなります。
さらに、分泌された皮脂が日光に当たって酸化すると過酸化脂質となり、細胞を酸化させてしまいます。
また、毛穴内に入り込んで毛母細胞に炎症を起こさせたり毛穴を詰まらせたりしてしまうので、これも髪の成長に悪影響を及ぼします。
最近フケが増えた、かゆみや炎症があるという場合は、まずは皮膚科で治療しましょう。
それだけで抜け毛が改善することが少なくないのです。
婦人科系のトラブルがある場合 → 婦人科
女性ホルモンには髪の成長を促し、健康に保つ働きがあります。
男性に比べて女性の髪の寿命は2年ほど長いのですが、それは女性ホルモンのおかげなのです。
しかし、このホルモンの分泌量は30歳前後がピークで、それ以降は緩やかに減り、45歳頃からがくんと減少し、更年期に入ります。
また、妊娠中は最高で分泌量が100倍に増えますが、出産後は一気に減ります。
これ自体は自然なことですが、やっかいなのは様々な不快症状を引き起こすことです。
生理不順や月経前症候群(PMS)、便秘、下痢、頭痛、腹痛、腰痛、イライラ、落ち込み、不安感などなど、女性なら誰でも経験したことがあると思います。
そして、この症状の一つに薄毛や抜け毛もあるのです。
そこで、何らかの婦人系トラブルがある場合は、婦人科を受診することをおすすめします。
症状に応じてホルモン補充療法や漢方薬の処方などをしてくれ、症状の改善とともに髪の毛のトラブルも減ってくる可能性が高いですよ。
ストレスが原因と思われる場合 → 心療内科
元々女性は男性に比べ環境が変わりやすいため、非常にストレスを受けやすくなっています。
就職、結婚、妊娠、出産に加え、ご近所や義両親、ママ友などとの付き合いを完全に避けることは難しく、さらに親の介護や冠婚葬祭などもあります。
いつでも気を張っていなければなりませんから、溜まるストレスの量は相当なものです。
そのため、自律神経失調症になる女性は男性の約1.6倍といわれています。
ちなみに、自殺率は男性が女性の約2倍という統計が出ており、ある意味女性のほうがストレスという嵐に耐える力が強いといえるかもしれません。
さて、ストレスが起こると体内では2つの自律神経のうち交感神経が活性化します。
この神経には闘争と逃走という働きがあり、ストレスに立ち向かう、あるいは逃げ出すために筋肉を緊張させます。
その際、筋肉の周辺にある血管も収縮してしまうため、交感神経が優位な時は血流が悪くなっています。
これが、頭皮に充分な血液が届かなくなり、薄毛を引き起こしたり悪化させたりする原因となるのです。
また、自律神経と女性ホルモンには密接な関係があり、どちらかが異常を起こすともう片方もおかしくなります。
これは、この2つをコントロールするのが脳の同じ部分だからです。
そのため、自律神経の乱れが大きくなると女性ホルモンの分泌量も減り、薄毛や抜け毛がどんどん進行してしまうのです。
自分にストレスが溜まっていると感じたら、恥ずかしがらず勇気を出して心療内科やメンタルヘルス科、神経科などを受診することも大切です。
薬を処方してくれることもありますが、医師に話を聞いてもらうだけで症状が軽くなるケースも多いのです。
まとめ
薄毛が気になり出したら、それ以外に不快な症状がないか、自分自身を見つめ直してみましょう。
その不快な症状を引き起こしている原因が改善すれば、女性の薄毛も良い方向に向かうことが充分期待できるのです。
(ただし、診察の際には「本当は薄毛を改善したいんです」とは言わないほうが良いですよ!)