ヘアケア

女性の医療用ウィッグの大切な役割

病気の症状や治療薬による副作用などで、「脱毛」を余儀なくされる場合があります。

そんな人にとって、不可欠なのが「医療用ウィッグ」ですが、かぶれなどに苦しむ人も多いといいます。

女性にとって大切な髪の毛が抗がん剤などによって失われるのは、精神的にも苦しんでいる方は多いと思います。

そんな女性の心の救いでもある医療用ウィッグ。そんな医療用ウィッグ誕生の背景と、ウィッグ選びのポイントをご紹介していきます。

脱毛による苦痛は女性にとって大きい

抗がん剤治療は昔とはだいぶ違っていて、効果が高い吐き気止めや便秘薬など、副作用対策の薬が進歩していて、それを使う事で副作用を軽減できるようになっています。

しかし患者さんが「抗がん剤治療中に感じる苦痛」として「脱毛」は上位に挙がっています。

ボディイメージや社会生活への影響だけでなく、髪の毛を失うことで自尊心を傷つけられてしまう方も少なくありません。

抗がん剤の投与に脱毛は避けられない

一口に抗がん剤といっても様々な種類があって、どのような仕組みで効果を発揮するかによって副作用も異なります。

脱毛を起こさない抗がん剤もありますが、乳がん治療によく使うものは脱毛しやすいです。

脱毛止めの薬はないの?

残念ながら、脱毛を止める方法はまだ開発されていません。現段階では脱毛は避けられないものとして、気になる場合はウィッグや帽子、バンダナなどで隠す対処法しかありません。

化学療法で脱毛を経験した方の約55%の方が、ウィッグを毎日使用していたことが分かりました。

また、71%の患者さんが1年から2年未満はウィッグを使用していたようです。

ウィッグは社会性生活を営むために必要なものであり、長い付き合いになるということです。

抗がん剤投与における頭皮の症状の変化

抗がん剤治療を行う場合は、前半と後半で3か月ずつ抗がん剤の組み合わせを変えて系6か月間治療を続けるケースが一般的です。

抗がん剤の投与から2~3週間で脱毛が始まり、ほとんどの場合は短期間で一気に抜け、12~13週で残っている髪の毛はまばらになっていきます。

症状では脱毛が始まったときにピリピリした痛みやかゆみを感じ、かゆみはその後も続くという患者さんが多いです。

副作用のメカニズム

抗がん剤の投与が影響する頭皮の生理機能が変化するはっきりした理由はまだわかっていません。

ですが、抗がん剤の影響で角質層のターンオーバーのサイクルが通常よりも長くなって角質層の数が増え、水分の蒸散が正常に行えなかったり、あるいは頭皮の水分量自体が低下している可能性が考えられます。

また、頭皮がブヨブヨとむくんでいる患者さんもいるようです。

医療用ウィッグの基準

医療用ウィッグを販売しているメーカーも多いですが、実は明確な定義があるわけではありません。

かぶれにくい素材を使ったり、通気性を良くしたり、メーカーによってはまちまちです。そのため、品質にはバラつきがあります。

規格は定められている

医療用ウィッグには統一された厳格な基準がない状態が続いていたことは確かですが、2015年に、医療用ウィッグのJIS(日本工業規格)規格が定められています。

直接皮膚に接触するネット部やスキンベース部(分け目につける人工皮膚)、附属品のインナーキャップ(ウィッグのベースとしてかぶるもの)など、各部分についてパッチテストを行い、皮膚刺激度、洗濯や汗にどの程度耐えられるかなどについて基準値を設けたのです。

ですので、医療用ウィッグとして申請されたものを審査し、基準に見合ったウィッグはJIS規格に適合していると認定されます。

JIS認定されていない医療用ウィッグもある

JIS申請や認定にはお金がかかるので、中小企業のウィッグメーカーなどでは質の高い医療用ウィッグを作っているのにJISを申請しない場合もあります。

つまり、JIS認定されていない医療用ウィッグだからといって質が悪いわけではない、ということもあり得るのです。

素材や留め具を工夫することで快適になる

メーカーによっては、直接頭皮に接触するネット部分に刺激の少ない素材を使ったり、留め具、サイズを調節するアジャスターに工夫を凝らすなど、改善を進めています。

中には頭皮に接する部分に摩擦を軽減するシルクプロテイン素材を使用し、ネット部分はソフトストレッチにして頭部への圧迫を抑えています。

低刺激型は皮膚への赤みが少なく、素材が滑らかで良いという声があるので、医療用ウィッグを選ぶなら低刺激型がおすすめです。

医療用ウィッグを選ぶポイント

抗がん剤治療をする患者さんは、脱毛やそれに伴う頭皮のトラブルがつらいと思っていても、「がん治療が優先」という病院内の雰囲気を考えると、医師にはなかなか伝えられないものです。

これから抗がん剤治療を受ける患者さんが、医療用ウィッグを選ぶポイントとしては、まずはお店で着用してみて、自分に似合っていて気にいったものを選びましょう。

そしてかぶり心地のいいもの、自分の生活スタイルに合ったものを選ぶことが大切です。

さらに頭皮の圧迫や摩擦を軽減し、皮膚に優しいものを選ぶといいでしょう。「ウィッグで脱毛を隠す」というより、「ウィッグでオシャレを楽しむ」という気持ちで、脱毛期間を過ごしてください。

αリポ酸誘導体という成分が抗がん剤による脱毛を抑止

抗がん剤脱毛と同じく毛根の炎症によって起こる脱毛症として知られているのが、円形脱毛症です。その治療薬に、セファランチンという抗酸化作用を含む薬があります。

抗酸化作用は炎症を抑える効果が高いので、円形脱毛症にもよく効くのです。

そこで、同じ炎症によって起こる抗がん剤脱毛にも抗酸化作用がきくのではないかと推測されるようになりました。

さらにできるだけ効果を上げるために、高い抗酸化作用を持つαリポ酸に着目したわけです。

その後αリポ酸を原資に、さらに抗酸化を強めたαリポ酸誘導体という物質を開発して、ラットを使った実験を行ったところ、見事に脱毛がブロックされました。

そこから現在では、本格的にαリポ酸誘導体の研究に着手しているところです。

抗がん剤による副作用と向きあう

がんが生命にかかわる病気だった時代には、命が助かればいいという発想で副作用が軽視されていましたが、いまやがんになっても長生きできる時代です。

そうなると、副作用の痛みや脱毛にもきちんと向き合って、トータルケアしなければなりません。

特に女性に多い乳がんについては、手術の前や後だけでなく、がんが消えた後も再発防止のために抗がん剤が使われます。

抗がん剤治療がかなりのウェイトを占めるので、できるだけ副作用を抑えて治療に前向きになってもらう必要があるのです。

医療用ウィッグで抗がん剤治療を明るく乗りきる

いかがでしたでしょうか?この記事では抗がん剤治療の副作用である脱毛の、当事者に与える心の負担を医療用ウィッグで軽減するということについて解説してきました。

がんと闘う女性にとって、抗がん剤治療はとてもオーソドックスな治療方法ですが、その副作用として脱毛があるのはなんとも耐え難いという人もいるはずです。

もちろん命が助かるための治療ですので、一概に抗がん剤治療が悪いとは言えませんが、その副作用のカバーリングとして、医療用ウィッグを使用することをおすすめします。

近年では、かぶれにくく着け心地の良い医療用ウィッグも販売されていますので、自分に合ったものを選んで、オシャレを楽しんでいただきたいです。

この記事を読んだ方が、少しでも現代の抗がん剤治療による脱毛の副作用について理解していただけたら良いなと思います。