毎日きちんと歯を磨いているはずなのに、いつの間にか虫歯が…。
そんなことって結構ありますよね。
しかし、そんな当たり前ともいえる虫歯が、薄毛の原因になっているという研究がアメリカで発表されました。
虫歯と薄毛の関係を、様々な角度から解説します。
Contents
日本人の虫歯事情
ここでは簡単に、日本人の虫歯について解説しましょう。
加齢とともに虫歯(治療済みも含め)は増える
当然といえば当然ですが、年を取るほどに虫歯やそれを治療した歯、抜いた歯は増えていきます。
2016年の厚労省のデータによると、1人当たりの虫歯数は以下のようになっています。
15~24歳 | 3.1本 |
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25~34歳 | 7.4本 |
35~44歳 | 12.1本 |
45~54歳 | 14.8本 |
55~64歳 | 17.1本 |
65~74歳 | 19.2本 |
永久歯の本数は親知らずを除くと28本ですから、50歳前後で半分、70歳前後には約7割の歯が虫歯になっているということですね。
日本人の虫歯の原因の一つは、歯並びの悪さ。
歯並びがその人のレベルを表わすという考えの欧米では、子供の頃から歯の矯正は当たり前。
きれいな歯並びだと食べた物が詰まりにくくなるため、虫歯も少ないのだそうです。
日本人がかわいいと考える八重歯も、あちらでは「貧しくて歯の矯正ができなかった人」と思われてしまうのです。
アメリカで発表された歯と薄毛の関係とは
2015年にアメリカで発表された内容は、こういったものでした。
歯のエナメル質は髪と同じケラチンでできている
ケラチンというのはタンパク質の一種です。
食事で摂ったタンパク質はそのまま使われるのではなく、一度アミノ酸に分解され、その後ビタミンやミネラルの働きによって各部分に必要なタイプのタンパク質に変化します。
ケラチンは全アミノ酸20種のうち18種類が再合成されたもので、髪の毛や爪、皮膚の角質層を作っているタンパク質です。
また、歯のエナメル質というのは歯の表面を覆う組織で、人体の中で最も硬いものとされています。
酸に弱く、溶けやすいという特徴があります。
このエナメル質が、髪の毛と同じケラチンタンパク質の成分から作られているのです。
エナメル質が変異することで虫歯になりやすくなる
アメリカの国立衛生研究所がデータを取ったところ、歯のエナメル質に含まれるケラチンは人によっていくつかのタイプに分かれ、そのうちの3つのタイプが虫歯になりやすいことがわかったそうです。
これは遺伝子検査によるもので、生まれつきそのタイプのエナメル質を持った人、あるいは突然変異で歯のエナメル質がそのタイプに変化した場合、虫歯になりやすい歯質になるということです。
虫歯になりやすいケラチン=薄毛になりやすいケラチン
さらに研究を進めたところ、3つのエナメルケラチンを持っている人は、髪の毛のケラチンも同じタイプとなっており、髪トラブルに見舞われやすいこともわかってきました。
そのトラブルの一つに薄毛も含まれており、虫歯になりやすい人ほど薄毛にもなりやすい可能性がある、ということなのです。
ケラチンの質は基本的に遺伝で決まっているため、変えることはできません。
そのため、虫歯を防ぐためには普通の人以上にしっかり歯のケアをしなくてはならないし、同様に髪の毛のケアもしないと、人より早く薄毛になるかもしれないのです。
銀歯が薄毛の原因になるという研究も
別の研究に、銀歯が多い人ほど薄毛になりやすい、というものがあります。
こちらについても見ていきましょう。
虫歯治療に使われる金属がアレルギーを引き起こす
昔は、虫歯治療といえば銀歯、つまりニッケルを使った治療法が一般的でした。
これは、安価な上に加工がしやすいからです。
歯を覆うだけでなく、詰め物にもよく使われていました。
現在は、歯科によっては全く使用しないところもありますが、現在でも目に付きにくい奥歯はニッケルが使われることがあります。
また、最近はニッケルの代わりに歯科用パラジウムという合金を使うことが増えています。
保険治療の詰め物や被せ物に多く、現在はこちらが主流となっています。
しかしニッケルや歯科用パラジウムはアレルギーを引き起こすことが多い金属です。
特に歯科用パラジウムに対するアレルギー感作率は約38%に上ります。
しかも、これらが唾液に溶けるとイオン化して血中に浸透し、全身にアレルギー症状が出やすくなるのです。
歯科用パラジウムは、EU諸国の数か国では全員または小児と妊婦には使用が禁止されています。
金属アレルギーは髪にも悪影響を及ぼす
歯科医の中には、金属アレルギーが薄毛の原因になる可能性について述べている人もいます。
イオン化した金属は、頭皮や髪の毛のケラチンタンパク質と結合しやすくなるという特徴があります。
すると毛根部がアレルギーを発症し、健康な毛母細胞を攻撃してしまうのです。
毛母細胞は細胞分裂や増殖によって髪を成長させるため、その機能が失われると髪が伸びなくなったり細いままになったりして、抜けやすくなってしまうのです。
すでに金属アレルギーがある人は歯科医に相談を
最近、金属アレルギーで口腔内に異常が出る人が増えているといわれます。
薄毛や抜け毛の原因になるかどうかは人によって違うものの、歯科用パラジウムは発がん性も指摘されている成分です。
できればメタルフリーにしてもらったほうが安心です。
虫歯でものがよく噛めない!これも薄毛の原因に
治療した歯でも薄毛の原因となる可能性がありますが、放置している虫歯が薄毛の原因となることも大いにあるのです。
よく噛まない→栄養不足に
虫歯が進行してくると、ちょっとしたことでズキッと来るようになりますよね。
それを避けるために段々噛む回数が減ってくると、唾液があまり出なくなります。
唾液は重要な消化酵素で、分泌量が少ないと胃腸に負担がかかり、充分に栄養を吸収できなくなります。
すると、吸収された少ない栄養素は内臓など重要な部分に使われてしまい、頭皮まで回って来なくなってしまうのです。
噛み合わせが悪い→血行不良に
もう一つ、虫歯が進行すると、反対側の歯で噛むようになります。
するとそちら側だけに負担がかかるようになります。
ものを噛むには咬筋や咀嚼筋が使われますが、常に片側だけを使用していると筋肉が硬くなり、その下の神経や血管が圧迫されて血流が悪くなります。
するとまずは顎がこり、次に首こりや肩こりが起こるようになります。
するとその部分で血液の流れが止まって頭部に充分な血液が届かなくなるため、薄毛になりやすくなるのです。
歯周病も薄毛の原因に
虫歯と歯周病は関係が深いようなイメージがありますが、実は全く違う細菌によって発生する、別の症状です。
虫歯はミュータンス菌、歯周病はアクチノバチルス、ジンジバリス、スピロヘータなどが病原菌となっており、どれも口腔内に存在する菌です。
しかし、元々菌が口の中にいるのですから、歯をしっかり磨かず汚れたままだと起こりやすくなるという意味では、とても深い関係があるのです。
実際、歯磨きをあまりしない人ほど虫歯にも歯周病にもなりやすいことがわかっています。
さらに近年判明してきたのが、歯周病菌は血中に溶け込んで体内を巡り、毒素をまき散らして髪の毛にも悪影響を与える、ということです。
また、歯周病菌はエンドキシンという物質を分泌するのですが、この物質が血中に入り込むと血流が悪くなり、髪の成長が止まりやすくなる可能性があるのです。
歯をしっかり磨きましょう!
虫歯も歯周病も、毎日の歯磨きがとても重要です。
歯科医によっては1日1回でもしっかり磨けば良いという意見もありますが、加齢とともに歯と歯の間の隙間が大きくなり、ものが詰まりやすくなります。
また、歯と歯茎の間も開きやすくなりますから、そこに菌が溜まって虫歯や歯周病になりやすくなるのです。
厚労省の調査では、歯周病に罹っている人は日本人の35~44歳が約8割、65歳以降になると約9割に達します。
虫歯や歯周病の人が必ず薄毛になるという訳ではないものの、可能性は高くなります。
日本歯周病学会によると、女性のほうが歯周病になりやすいそうですので、薄毛予防や改善のためにも、しっかり歯を磨きましょう。