今やダイエットの王道となった感のある糖質制限。
スーパーやコンビニでも低糖質のお菓子やパンなどが売られるようになりました。
しかし、髪の毛に関しては「髪が抜けやすくなった」「ハリが出てきて抜けなくなった」と両極端。
これはどういうことなのでしょうか。
Contents
糖質制限はどんな方法?
まずは簡単に、糖質制限について説明しましょう。
糖質とは?
糖質とは、炭水化物から食物繊維を抜いたものを指します。
例えば、「クッキー1枚 炭水化物5.6g、食物繊維0.2g」と書かれていたら、糖質は5.4gということになります。
なお、似た言葉に「糖類」があります。
これは糖質から多糖類や糖アルコールを除いたもののことで、砂糖や果糖、麦芽糖、乳糖、ブドウ糖などを指します。
「糖類ゼロ」と書かれても甘いのは、糖質のエリスリトールやマルチトール、スクラロースなどを使用しているからです。
元々は、糖質制限は糖尿病患者のためのもの
糖質制限は元々ダイエットのためではなく、糖尿病患者の方のための食事療法として考え出されたものです。
自身が糖尿病を患っていた江部康二医師が提唱したもので、血糖値を上昇させないよう、その原因となる糖質の摂取を減らし、タンパク質中心の食事を摂るというものです。
また、これとは別に、ダイエット王国アメリカでは「アトキンス・ダイエット」という、タンパク質と脂質を中心に摂取する方法が1970年代から流行しており、成人の7人に1人が試したという統計があります。
この方法も糖質制限と全く同じく血糖値を上げないことを目的にしたものですが、最初から痩せることを目的にしたものでした。
糖質摂取量に厳格な決まりはないが…
糖質制限はその名の通り糖質を制限するものですが、量に関しては厳しい決まりはありません。
一応の目安としては、以下の量になります。
・スーパー糖質制限(糖尿病患者やメタボ、及びその予備軍)…1日30~60g
・スタンダード糖質制限(ダイエット目的)…1日80~120g
・ゆる糖質制限(初心者、スーパー糖質制限終了者)…1日120~170g
これをご飯で換算すると、ご飯茶碗1杯が糖質55~65g程度なので、スーパー糖質制限なら1日1杯、スタンダードなら1日2杯ということになります。
簡単にできそうでしょうか?
実は結構大変です。
糖質制限で難しいところは、多くの食材に糖質が含まれていることです。
近年、ご飯やパンなど主食を控える女性が増えていますが、それでも日本人女性の平均的糖質摂取量は210g程度あります。
これは、お菓子などで摂取してしまっている場合もありますが、野菜にも結構な量が含まれているからです。
例えば、じゃがいもは1個22.0g、にんじん1本8.5g、玉ねぎ中1個13.0g、かぼちゃ1/8個20.5gと、野菜のおかずを普通に食べただけですぐオーバーしてしまうのです。
糖質制限で薄毛になりやすいといわれる理由
糖質制限で髪が抜けるようになったという体験談は少なくありません。
その原因には以下のことが考えられます。
糖質を減らし過ぎてタンパク質が減る
タンパク質をたっぷり摂っているのに減るというのは、不思議に思うかもしれません。
しかし、人間の身体は最も効率の良いエネルギー源である糖質の一種グルコースが不足すると、タンパク質を分解して代わりのエネルギー源とします。
そのため、糖質を減らせば減らすほどタンパク質が消費されてしまうのです。
私たちの身体は細胞が集まってできていますが、細胞の成分で最も多いのが水分、次がタンパク質です。
そのため、タンパク質が不足すると内臓も筋肉も肌も、すべてが作れなくなってしまいます。
髪を産み育てる毛母細胞もタンパク質なら、髪の毛もケラチンというアミノ酸が18種類結合したタンパク質ですから、当然髪の毛の成長に悪影響を及ぼすのです。
筋肉が減り血行が悪くなる
筋肉の成分は、タンパク質が約80%、脂肪が約15%です。
そのため、タンパク質がエネルギー源として消費されてしまうと、筋肉も減ります。
筋肉は、血液の循環を助けています。
血液は心臓のポンプによって全身に送られますが、重力に逆らって頭部に届けるには、筋肉の動きが必要です。
筋肉が動くと回りの血管も伸縮し、その力で血液が循環するのです。
そのため、筋肉不足は頭部への血行不良を招き、毛母細胞に栄養が届きにくくなります。すると髪の毛が細く弱くなり、薄毛になりやすくなるのです。
食物繊維の摂取量が減り老廃物が蓄積される
糖質制限をしたことのある人の多くが悩むのが「便秘」です。
これは、肉や魚、乳製品など動物性タンパク質には、食物繊維がほぼゼロだからです。
植物性タンパク質の大豆には多くの食物繊維が含まれているものの、大半の人は動物性タンパク質を中心に摂取します。
さらに、糖質が多い野菜ほど食物繊維が豊富なことが多く、それらを避けてしまうため、便秘がちになるのです。
食物繊維には腸内環境を整え、老廃物を包み込んで排出する働きがあります。
不足すると悪玉コレステロールが増えて血液がドロドロになり、血流が悪くなります。
また、便に含まれる老廃物や有害物質が血中に溶け込んでしまい、全身に送られてしまいます。
すると毛母細胞の細胞分裂がうまくできなくなったり、汚れた血液によって髪が上手く育たなくなったりするのです。
糖質制限で薄毛が改善したという理由
糖質制限したことによって、髪にハリやコシが出て薄毛が改善した、という女性もいます。
体験談を読むと以前はかなり糖質を摂っていた人が多く、薄毛改善の理由にはこんなことが考えられます。
血糖値が上昇しにくくなり血管のダメージが減る
糖質を摂取すると血糖値が上がり、それを下げるために膵臓からインスリンが分泌されます。
これが繰り返されるとインスリンの分泌量が減ってきて、高血糖のままになります。
すると毛細血管がダメージを受けて血流が悪くなるだけでなく、血管も傷ついてしまいます。
糖質を制限すると血糖値が上がりにくくなるので、血液がサラサラになり毛細血管を通って頭皮に充分送られます。
すると髪の成長が良くなり、抜け毛が減るのです。
糖化が抑えられ細胞が老化しにくくなる
近年注目されるようになったのが「糖化」です。
摂取過剰で余った糖質がタンパク質と結びついてタンパク質が変質、劣化してしまい、AGEsという老化物質を作り出してしまうのです。
糖化は、血糖値が急激に上がったり下がったりの繰り返しや高血糖の継続によって、進んでしまうことがわかっています。
AGEsは出来てしまうと分解されにくく、蓄積された場所によって様々な老化現象が出てきます。
例えば肌の奥に蓄積されればコラーゲンやエラスチンの機能が劣化して肌の弾力性がなくなり、頭皮に蓄積されると髪が成長途中で抜けやすくなってしまうのです。
しかし、糖質の摂取量が減ればAGEsも減るため、頭皮の劣化が抑えられて薄毛の悪化が食い止められるのです。
糖質制限で薄毛を予防・改善するには
失敗した人と成功した人の違いを比べると、それまで糖質を摂り過ぎていた人がある程度控えると育毛効果が出やすく、減らし過ぎると薄毛になりやすいという傾向があります。
そこで、以下のことを考えながら行ないましょう。
自分に合った糖質量を目安にする
厚生労働省によると、1日の炭水化物の必要摂取量はカロリーの50~65%となっています。
また、農林水産省のHPによると、成人女性で身体活動量が低めの場合、1,400~2,000kcal、活動量が普通以上の場合は2,200±200kcalとなっています。
食物繊維はカロリーが非常に低いため、ここでは無視して計算すると、必要カロリーを最低の1,400kcal、炭水化物を50%とすると700kcalとなります。
炭水化物は1gが4kcalなので、1日最低でも175gは必要ということになります。
また、2,000kcal、65%の場合は325gです。
毎日自分が食べているものをレコーディングし、大体どのくらい炭水化物を摂っているかを把握し、175~325g内に収まるようにしましょう。
適度な運動をする
糖質制限中は、筋トレと有酸素運動のセットが良いといわれています。
有酸素運動のみだと筋肉量が低下しやすいため、まず筋トレで糖質を燃やし、次に筋トレで脂肪を燃やすことで、筋肉量を減らさずにダイエットができるのです。
また、筋肉が減らない上に運動によって血行が良くなるので、頭皮にも栄養が届きやすくなります。
しかし、本格的な運動をする時間がないという場合は、できるだけ足の筋肉を強化するよう、少しももを高く上げて歩いたり階段の昇り降りをしたりすると良いでしょう。
足には全身の筋肉の7割が集まっているので、意識して使うだけでも筋肉強化につながるのです。
また、全身の筋力アップや基礎代謝の向上にはスクワットもお勧めです。
まとめ
糖質制限は、自分に合った糖質やタンパク質の量を把握すれば、ダイエットにも薄毛予防改善にも効果が期待できます。
失敗している人の多くは、糖質の制限し過ぎや食物繊維の不足が原因です。
無理はせず、「ゆる糖質制限」で髪の成長を助けましょう!