食事中、一口入れて何回噛んでいるか、数えたことありますか?
最近は柔らかいものばかり食べているからそんなに噛んでない気がする、虫歯があるからあまり噛めない…そんな女性は要注意!
せっかく健康にも美容にも良い食べものを食べても、噛まないと効果が薄れてしまうんです。
もちろん、髪に良いと言われる栄養素も髪に届かないかも!
噛むことの重要性について解説します。
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現代人は噛む回数が減っている
現代の日本人の一度の食事での咀嚼(そしゃく)回数は、平均すると約620回です。
これを平均すると、一口につき10~20回。
ところが、戦前は約1,420回、鎌倉時代は約2,650回、卑弥呼の弥生時代には何と約4,000回だったといわれています。
これは当時の食事を再現し、実際に食べてみて計った回数だそうです。
当然食事にかかる時間も違い、卑弥呼時代は約50分、鎌倉時代が約30分なのに対し、戦後はたった11分と大幅に減っています。
この差は、食べるものの硬さにあります。
弥生時代の食事を再現し女子大生に食べてもらったところ、51分、約4,000回噛んでも食事が終わらず、その時点でもう口が動かなくなったそうです。
昔の人は、そんなハードな食事を毎日続けていたのです。
咀嚼回数と健康との関係は?
早食いは太る、とは昔から言われてきたことですよね。
実は、それ以外にも噛む行為には様々な健康メリットがあるのです。
一つずつ見ていきましょう。
早食いすると、当然噛む回数が減ってきます。
すると、脳が満腹を感じるまでに大量に食べてしまうのです。
脳の視床下部という部分には摂食中枢と満腹中枢があり、胃のサインを感じ取ると空腹感や満腹感がわくようになっています。
満腹中枢の場合、血糖値が上がるとそれが中枢に伝わり、満腹感が出るのです。
しかし、血糖値が上がり中枢に伝わるまでには15~20分かかります。
早食いすると実際には満腹でも、その信号が脳に伝わるまでの間食べ続けてしまいやすく、その結果どんどん体重が増えてしまうのです。
ゆっくりよく噛んで食べると、ほどよく食べた時点で満腹中枢に情報が伝わり、腹八分目でストップすることができます。
また、噛むと脳内のヒスタミンという物質が活性化し、食欲を抑えるだけでなくエネルギーの消費を促進してくれるのです。
噛むという行為は、口の中だけでなく脳にも刺激を与えます。
口の中には咀嚼筋や舌筋、口蓋筋、咽頭筋などがあり、神経も張り巡らされています。
それが脳に繋がっているので、脳が刺激を受けるのです。
噛むことで視床下部が刺激を受けると、それが脳内全体に広がり脳の感覚系と運動系両方で情報のやり取りが行なわれます。
それによって、口に入れたものを舌が適切な位置に送り、硬いものはしっかり、柔らかいものは軽く噛み、唾液が分泌され、飲み込むという一連の動作がスムーズに進むのです。
このように、噛むことで脳内が刺激されるので、認知症予防に非常に効果が高いと言われています。
さらに、海馬という記憶力を司る部分も活性化されるので、噛めば噛むほど記憶力が増し、頭脳明晰になっていくのです。
自律神経には交感神経と副交感神経がありますが、現代人は交感神経の方ばかり活性化しています。
この神経には興奮作用があるため、良い時は活動的になりますが、悪い時はイライラがつのり、心身に悪い影響を与えます。
そこでお勧めなのが、よく噛むことです。
接触中枢や満腹中枢がある視床下部は、自律神経をコントロールする部分でもあります。
そのため、よく噛むと自律神経のバランスが整いやすくなり、ストレスが軽減されるのです。
さらに、精神安定作用があるセロトニンという脳内物質も分泌されるので、心身のリラックス効果が高まります。
よく噛むと、唾液の分泌量も増えます。
唾液にはアミラーゼやマルターゼ、リパーゼなど炭水化物と脂質を消化する酵素が含まれています。
しっかり噛むことで口の中で消化作業が始まると、胃にかかる負担が少なくなり、栄養を充分吸収することが出来るようになるのです。
唾液には消化酵素のほかリゾチームやラクトフェリン、免疫グロブリンなど殺菌・抗菌作用のある成分も含まれていて、細菌が体内に入り込むのを防いでいます。
さらに、発がん性があるといわれる、食べ物の焦げなどが発生する活性酸素を除去する酵素もあります。
「IGF-1」はインシュリン様成長因子とも呼ばれ、成長ホルモンから作られる物質です。
細胞の成長と増殖を促し細胞の劣化を防ぐことから、子供だけでなく大人の新陳代謝促進にも重要な役割を果たしています。
IGF-1が多いほど肌のターンオーバーが促されるので、ハリとツヤのあるお肌の維持に効果が期待できます。
噛むと小顔効果が期待できる
最近どうも顔がたるんできた、という人は噛むことで顔の筋肉に刺激を与えるため、シェイプアップ効果が期待できます。
ただし、噛む行為は咀嚼筋を発達させ、やりすぎるとエラが張ってしまいます。
よく噛んだ後は、エラ部分を軽くマッサージし、筋肉がつき過ぎないようにすると良いですよ。
噛むと髪にも良い!その理由
噛むということが非常に健康や美容に良いということがおわかりいただけたのではないでしょうか。
では、髪の毛の健康にはどのような作用があるのでしょうか。
2014年の記事で、コロンビアの「理容牛」が紹介され、話題になったことがありました。
なんと牛に頭皮をなめさせると薄毛を改善する効果があるということで、それ専用の牛が育てられているのです。
人間だけでなく牛の唾液の中にもIGF-1が含まれています。
この成分を塗ると、薄くなった頭皮に発毛・育毛効果があることがわかり、その効果を利用しているのです。
なぜ牛かというと、人間の唾液が1日約1.5リットルなのに対し牛は1日に分泌する唾液量が50~100リットルと非常に多いからです。
実際、牛に頭皮をなめられて髪が増えた人は多いそうです。
また、日本の研究でも、唾液が出にくくなるシェーグレン症候群や反復性耳下腺炎などの患者さんは、薄毛が多いという統計が出ています。
さらに、唾液内にはシアル酸という、学習能力向上や感染予防に効果があるといわれる物質が含まれています。
この酸は胃に入ると遊離シアル酸に変化し、IGF-1を増やす働きがあるといわれています。
このように、唾液は外部からつけても内部で分泌されても発毛・育毛効果が期待できるのです。
噛むことで頭皮の血流が良くなる
歯を支える骨と歯根の回りには、歯根膜という部分があります。
噛むとこの部分にある血管が押されたポンプ状態になり、勢いよく血液を脳に送り込むようになっています。
つまり、しっかり噛めば噛むほど歯根膜に力が加わり、血流が良くなるのです。
脳の血管は頭皮の血管とつながっていますから、頭皮にも充分な血液が届くようになります。
すると髪を産み育てる毛母細胞の機能が促進され、より早くより健康な髪が作られるようになるのです。
唾液をたっぷり出すには
最近、お茶などを飲まないと噛んだものを飲み込めない、という人が増えています。
これは唾液の分泌量が少なくなっているためで、その状態が続くと髪にも悪影響を及ぼします。
そこで、唾液を増やす方法をいくつかご紹介しましょう。
一口食べものを口に入れたら30回は噛むようにしましょう。
この時お箸を置くと次に食べものを取る動作に時間がかかるため、満腹中枢が働いて腹八分目でお腹いっぱいになりますから、肥満防止にもなって一石二鳥です。
なお、中には「100回噛め」という人もいますが、実際問題としてそんなに噛む前に溶けてしまいます。
無理はせず、まずは30回を目標にして、慣れたらもう少し増やすと良いでしょう。
柔らかいものはあまり噛まずに飲み込めてしまうため、唾液の分泌量が増えません。
できるだけ固めのものを食事に盛り込みましょう。例えば、豆腐の場合は絹ごし豆腐より厚揚げにする、といった簡単な工夫でOKです。
ガムを口に入れると必然的に噛むことになりますから、唾液の量も増えます。
最近はキシリトール入りなど虫歯になりにくいガムが多く販売されているので、そういったものを利用しましょう。
舌を動かすと唾液腺が刺激されるので、唾液の分泌量が増えます。
口を大きくゆっくり動かして「あ」「い」「う」と発音し、最後に舌を思い切り前に出して「べー」する運動を習慣にしましょう。
まとめ
噛むという簡単な行為で、健康にも肌にも髪にもとても良い効果が期待できます。
慣れるまでは大変ですが、ちょっと噛んでお茶で流し込んで…というルーティーンを見直し、ゆっくり丁寧に噛んで唾液をたっぷり分泌させましょう。