「亜鉛」はミネラルの一種で、人間の身体に必須の成分です。
しかし、日本人が最も不足しているミネラルで、さらに日本ではまだあまり研究されていません。
欧米では亜鉛(Zinc)は古くからリサーチされており、その効能・効果からサプリメントもたくさん販売されています。そして、その効能の一つに「薄毛予防・改善」があるのです。
今回は、亜鉛のすごさについて解説しましょう。
Contents
亜鉛とは?
亜鉛は必須ミネラルの一つで、体内に存在する量はたった2gながら、血液や皮膚、内臓、骨、髪など様々な部分に含まれています。
亜鉛は必須ミネラルの一つ
亜鉛が必須ミネラルといわれるのは、人間が生きていくために必要な300もの酵素の成分だからです。
酵素には細胞分裂や増殖、新陳代謝、抗酸化、免疫強化など生命維持に不可欠な役割があるので、亜鉛が不足すると身体が弱くなったり成長が止まったりするのです。
欧米では亜鉛はガン予防に必須
日本では何故か亜鉛の研究が遅れており、必要摂取量や摂取の上限はアメリカのデータから日本人の体重などを考慮して考え出されたものです。
欧米では、亜鉛不足がガンにつながると考えられており、数十年間から大手メーカーがサプリメントを販売しているほどです。
なぜガンを引き起こす可能性があるかというと、亜鉛には細胞分裂を正常に行なう役割があるからです。
正常な細胞が正常にコピーされて初めて、私たちの身体は健康でいられます。
しかし亜鉛が不足すると細胞のコピーが不完全となり、ガン細胞に変化してしまう可能性が高いとされているのです。
亜鉛を食事で必要量摂取するのは難しい
これほど重要なミネラルでありながら、日常的に食べる食材にはあまり含まれていません。
例えば、生牡蠣や豚肉のレバー、ほやなどが代表的です。
最も身近な食べ物としては牛肉の肩、肩ロース、ひき肉がありますが、必要摂取量を摂るには毎日200~300g以上食べなければいけません。
豚肉や鶏肉になると含有量はもっと少なくなるので、毎日食事で充分な量摂るのはかなり厳しいのです。
しかも吸収率が低く、10~30%程度といわれていますし、さらに吸収率を下げるリン酸塩などが多くの加工食品に含まれているため、ますます不足しがちです。
亜鉛の代表的な14の働き
亜鉛には、主に以下の働きがあるとされています。
1.免疫機能を助ける
2.高い酸化防止作用がある
3.ホルモンバランスを整える
4.糖尿病を改善する
5.血液の循環をサポートする
6.消化器系を強化し下痢を防ぐ
7.生殖能力を高める
8.栄養の消化吸収を助ける
9.肝臓を強化する
10.筋肉の成長を助ける
11.目の健康を守る
12.ケガの治癒を早める
13.ストレスを軽減する
14.脱毛促進酵素を抑制する
これらの多くはアメリカで発表されたもので、日本ではまだ研究段階のものもあります。
しかし亜鉛への注目度が非常に高く、医学的根拠を重要視するアメリカでの研究結果ですから、信頼性は高いと考えて良いでしょう。
薄毛予防や改善に役立つ働き
上記の中から、特に髪の成長に大きく関わっている働きについて説明しましょう。
高い酸化防止作用がある
亜鉛は抗酸化物質スカベンジャーと協力して、活性酸素を抑制する作用を持っています。
スカベンジャーとは体内で合成されるSOD酵素や体外から取り入れるビタミンB群・C・E、ポリフェノールなどの総称で、活性酸素から細胞を守る働きがあります。
しかしスカベンジャーは加齢とともに減少するため、亜鉛がその働きをサポートしてくれるのです。
活性酸素はある程度の量であれば、体外からの異物を排除する働きがあります。
しかし増えすぎると健康な細胞を傷つけ、劣化させてしまうのです。
髪の毛を産み育てる毛母細胞や髪に色をつけるメラノサイトを傷つけるため、活性酸素は抜け毛や細毛、白髪などの大きな原因となります。
そこで亜鉛を摂取すると、活性酸素の働きを食い止め、毛母細胞やメラノサイトの正常な細胞分裂を助けてくれるのです。
ホルモンバランスを整える
亜鉛には、女性ホルモンの分泌に働きかける作用があります。
女性ホルモンは髪の成長や寿命に大きく関わっており、女性ホルモンが多いほど髪の健康が維持されます。
しかしこのホルモンは加齢とともに減少し、30歳前後がピーク、40代半ばには約半分、50代に入ると約5分の1になってしまいます。
亜鉛には女性ホルモンの生成に必要な成分で、髪の正常な成長の他、月経前症候群や不妊症にも効果が期待されています。
もう一つ、成長ホルモンの分泌を助けることもわかっています。
成長ホルモンの分泌は思春期後半がピークでその後は急激に減っていきますが、60歳を過ぎてもゼロにはなりません。
このホルモンには細胞を修復し新陳代謝を助ける働きがあるので、亜鉛を摂ることで頭皮と髪の健康を促進してくれるのです。
血液の循環をサポートする
亜鉛には動脈の細胞に働きかけ、血管の健康を維持する働きがあります。血管を詰まらせる原因となるコレステロールや中性脂肪を減らし、血液をサラサラにしてくれるのです。
その結果、髪の毛の10分の1しかない頭皮の毛細血管にも血液が充分届き、成長途中で髪が抜けることがなくなっていくのです。
ストレスを軽減する
ストレスが起こると、私たちの身体は交感神経を活性化させて対処しようとします。
その際に筋肉やその周りの血管が硬くなり、血流が非常に悪くなります。
そのため、常にストレスを抱えている現代人は頭皮に充分栄養が届かず、薄毛になりやすいのです。
亜鉛には、「メタロチオネイン」という、活性酸素を除去する物質を作り出す働きがあります。
そのため、亜鉛を常時摂取しているとストレスに強くなり、血管の収縮が抑えられるので、薄毛になりにくくなる効果が期待できるのです。
さらに、メタロチオネインには有害重金属を軽減する働きがあります。
髪の毛には有害重金属を集め、排出するデトックス作用がありますが、頭皮環境が悪いと頭皮や体内に蓄積され、育毛に悪影響が出てしまいます。
亜鉛を摂ることで、有害な重金属の排出を維持することができるのです。
脱毛促進酵素を抑制する
脱毛を促進する5α-リダクターゼ酵素は、男性ホルモンのテストステロンと結びつくことでDHT(ジヒドロテストステロン)という別の男性ホルモンに変化します。
DHTには強力な脱毛作用があるため、男性の脱毛(AGA)の原因となるのです。
これは男性だけの問題ではありません。女性にも男性ホルモンは存在し、女性ホルモンと違ってなだらかに減少していきます。
そのため30代後半頃から男性ホルモンの影響が強くなり、女性男性型脱毛症(FAGA)が起こりやすくなるのです。
また、男性ホルモンはストレスによって増えることがわかっており、男性と肩を並べてバリバリ働く女性ほど薄毛になりやすいといわれています。
これを防止してくれるのが亜鉛です。男性用育毛剤には必ず配合されているほどで、亜鉛は5α-リダクターゼを抑制してくれるのです。
亜鉛を効率的に摂りましょう
前述したように、亜鉛は食品だけから摂取するのが難しく、しかも吸収率が悪い上に吸収が阻害されやすい成分です。そのため、以下のことに注意しましょう。
できるだけ亜鉛が多い食材を摂る
亜鉛の1日の推奨摂取量は、女性が8mg、男性が10mgです。そこで以下の食材を積極的に摂りましょう。
食 材 | 亜鉛含有量(100g当たり) |
牡蠣(生) | 13.2mg |
豚レバー | 6.9mg |
松の実 | 6.0mg |
ゴマ | 5.9mg |
高野豆腐 | 5.2mg |
牛肉(肩・肩ロース) | 4.9~4.6mg |
牛肉(ひき肉) | 4.3mg |
牛肉(ひれ) | 4.2mg |
卵黄 | 4.2mg |
ローストビーフ | 4.1mg |
たらこ(焼) | 3.8mg |
鶏レバー | 3.3mg |
プロセスチーズ | 3.2mg |
ポップコーン | 2.4mg |
干ししいたけ | 2.3mg |
オートミール | 2.1mg |
切り干し大根(乾燥) | 2.1mg |
納豆 | 1.9mg |
豆腐 | 0.6~0.5mg |
アルコールの摂取を控える
亜鉛は、アルコールを分解する働きがあります。
そのため、飲酒量が多いとせっかく摂った亜鉛もそちらに使われ、髪まで届かなくなってしまいます。
本気で薄毛を何とかしたいなら、アルコールの摂取はできるだけ控えましょう。
亜鉛の吸収を阻害する成分をできるだけ控える
亜鉛は、次の成分によって吸収が阻害されてしまいます。
亜鉛が多い食品やサプリを摂った時は、これらの食材を控えましょう。
吸収阻害成分 | 多 い 食 材 |
フィチン酸 | 玄米、米ぬか、豆類 など |
シュウ酸 | ほうれん草、たけのこ、なす、チョコレート、コーヒー、紅茶、緑茶、ココア など |
ポリリン酸(リン酸塩) | ハム、ソーセージ、プロセスチーズ、豆類、魚類、インスタント食品、加工食品 など |
食物繊維 | 玄米、とうもろこし、豆類、芋類、根野菜、果物、キノコ類、海藻 など |
タンニン | 緑茶、コーヒー、紅茶、ウーロン茶 など |
サプリメントを活用しましょう
含まれている食材が少ない上に吸収率が良くないとなると、食事だけで摂るよりサプリメントを利用したほうが効率的です。
亜鉛のサプリは比較的安価で1ヶ月分500円程度からありますから、上手く利用しましょう。
まとめ
亜鉛が髪の毛を始め健康に欠かせない成分だということがおわかりいただけたと思います。
出来るだけ意識して亜鉛が多い食材を摂ったり、サプリメントで補給したりと、無理なく続けてくださいね。