更年期になると、薄毛が目立ってくるという女性はとても多いです。
中には地肌が透けて見えてしまうほどの人も。
本人ならずとも、ハゲてしまうのではないかと心配になってしまいます。
この原因とされているのが、女性ホルモンの減少です。
更年期に入るとホルモンの分泌量が減り、その影響が髪に出てくるのは良く知られています。
そこで今回は、女性ホルモンの減少が直接的・間接的に引き起こす薄毛の原因について、詳しく解説します。
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更年期と女性ホルモンの関係
更年期は女性ホルモンの分泌量が減るといわれていますが、実際にはどの程度減り、どんな症状が出てくるのでしょうか。
女性ホルモンは30歳以降減り始める
女性ホルモンとは、卵巣で作られるエストロゲンとプロゲステロンのことです。
思春期から分泌量が増え、30歳前後でピークになります。
それ以降は卵巣の機能が低下するため徐々に減り始め、45歳頃からは急カーブで減少します。
そして10年後には思春期前の分泌量になってしまうのです。
この、急カーブで減る約10年間を更年期といいます。
更年期の不快な症状の原因
更年期になると、多くの女性が不定愁訴に悩まされます。
のぼせやほてり、頭痛、倦怠感、落ち込み、イライラ…。
人によってはほとんど変化がない場合もありますが、中には自殺したくなるほどの抑うつ症状に悩まされる人もいます。
これは、自律神経の乱れによるものです。自律神経と女性ホルモンの分泌をコントロールしているのは、脳の視床下部という部分です。同じ部分で調節しているため、女性ホルモンの分泌量が減るとそれが自律神経にも影響を及ぼすのです。
では、なぜ影響が出るのでしょうか。それは、視床下部には卵巣機能の低下を判断することができず、女性ホルモンの分泌量が減るともっと分泌するよう指令を出すからです。
卵巣にはその指令に応えるだけの力がもうないため、指令を無視するしかありません。
すると脳はさらに強い指令を出し続けるため、視床下部が混乱してしまい、自律神経にも悪影響を及ぼしてしまうのです。
更年期の諸症状が女性の薄毛を悪化させる
更年期になり女性ホルモンが減ると様々な症状が出てきて、それが直接的、間接的に薄毛や抜け毛を悪化させる原因となるのです。
女性ホルモンには髪の毛の寿命を伸ばす働きがある
更年期になると、多くの女性が髪トラブルで悩むようになります。
その原因は、女性ホルモンのエストロゲンに髪の健康を維持する働きがあるからです。
35歳前後から何となく薄毛になってきた、部分的に髪が減ってきた、細くなってきたといったトラブルを感じるようになり、それが更年期になると一気に表面化する女性は少なくありません。
いくらしっかりスタイリングしてもすぐぺしゃんこになってスタイルが保てなくなり、老けた印象を与えてしまうようになるのです。
自律神経が乱れて血流が悪くなる
前述の通り、女性ホルモンと自律神経には密接な関係があります。
さらに、40代も後半になると肉体的な変化に加え、親の介護や子供の進学や独立、職場での地位、老後に向けた生活の変化など、様々なことが女性の肩にのしかかってきます。
こういったことが重なって自律神経が乱れるようになると、ストレスが溜まります。
すると交感神経が活性化して血管が収縮しやすくなり、頭部に充分な栄養が届きにくくなるのです。
髪の毛は血液の栄養分によって成長するため、更年期になると髪が細く弱くなり、抜けやすくなってしまいます。
コルチゾールの分泌量が増えて女性ホルモンが減る
コルチゾールは抗ストレスホルモンとも呼ばれ、ストレスを感じると分泌されるようになっています。
このホルモンは副腎皮質で作られますが、材料となるのはコレステロールで、女性ホルモンと同じです。
そのため、ストレスが溜まれば溜まるほどコレステロールがコルチゾール合成のために消費されてしまい、女性ホルモンが作られにくくなってしまうのです。
また、コルチゾールは代謝に関わる重要な成分ですが、長期間分泌されていると皮膚の柔軟性を維持するコラーゲンやエラスチンの合成を抑制してしまうことがわかっています。
その結果頭皮が硬くなり、毛細血管を圧迫して血流を悪くしてしまい、頭皮が栄養不足を起こして髪の成長を止めてしまうのです。
頭皮の皮脂分泌量が増える
更年期になるとお肌がカサカサになる人が増えますが、これは水分が減少しているためで、脂分はむしろ増えます。
この原因は、水分が減少したことを皮脂分泌量を増やすことでカバーし、皮膚が外気にさらされるのを防ごうとするからです。
また、男性ホルモンの影響もあります。男性ホルモンには、皮脂分泌量を増やす作用があるのです。
女性にも男性ホルモンはありますが、若い頃は女性ホルモンの働きが強いため、それほど皮脂量は増えません。
しかし更年期に入り女性ホルモンが減ると相対的に男性ホルモンの影響が強まり、皮脂が増えて頭皮や髪がべたつくようになってくるのです。
皮脂が増えると、頭皮の常在菌が大量繁殖し、炎症を引き起こします。
また、紫外線によって酸化してしまいます。その結果毛穴奥の毛母細胞がダメージを受け、髪の成長を止めたり抜けたりしてしまうのです。
高血圧になりやすい
更年期に差し掛かると、血圧が高くなる女性が増えています。
30代までは正常範囲内だったのに40代に高血圧になる人は約28%、50代では約50%、60代では約70%まで増えるという統計もあります。
この原因の一つは、血管を拡張させる働きのあるエストロゲンの分泌量が減ることです。
さらに、食生活の欧米化で蓄積された中性脂肪やコレステロールを燃焼させる代謝機能が加齢とともに低下し、血中に入り込んで血液をドロドロにしてしまうことも大きな原因です。
高血圧になると血流が悪くなるため、頭皮まで充分届かなくなります。
しかも届いた血液が老廃物混じりとなると、当然頭皮環境が悪くなります。
その結果、抜け毛や細毛が増えてしまうのです。
さらに、東京大学医学部の研究によると、ホットフラッシュが起こりやすい人と妊娠時高血圧になった人・尿蛋白や尿糖の症状が出た人は、血圧が高くなりやすいという結果が出たそうです。
更年期をうまく乗り切るには
更年期はどんな女性にも訪れるものですが、症状の出方には人によって大きな差があります。
運悪く症状がひどく、抜け毛や薄毛で悩んでいる人は、以下のことを実践してみてください。
大豆製品を積極的に摂る
大豆製品に含まれるイソフラボンという成分には、女性ホルモンに似た作用があります。
様々な不快な症状を軽減することが知られているので、毎日の食卓に大豆製品を取り入れましょう。
なお、サプリメントでイソフラボンを摂取する方法もありますが、サプリメントの場合摂取量に制限があります。必ず用量を守るようにしてください。
規則正しい生活を送る
人間の体内には体内時計があり、朝日を浴びて目覚め、暗くなると眠くなるようにできています。
しかし加齢とともにこの機能が低下すると、睡眠時間がずれたり熟睡できなくなってきたりします。
そこで、できるだけ毎日同じ時間に起き、晴天の日は午前中にしっかり日の光を浴びるようにしましょう。
そうすることによって自律神経が調整され、体調が良くなってきます。
また、夜熟睡できないという場合は、昼寝もOKです。
ただし15時以降にすると体内時計が狂いやすいので、昼食後の30分前後がおすすめです。
たったそれだけでも夜1時間眠ったのと同様の効果があるといわれています。
有酸素運動をする
ウォーキングやジョギングなどの軽い有酸素運動によって、更年期障害が軽くなることが報告されています。
毎日が望ましいのですが、それが無理でも週に3~4回、1回30分程度を目安に行なうことで効果が出るといわれています。
また、NHKで放映しているラジオ体操も大変有効です。
全身運動になる上、筋トレの要素もあるため、血流アップや筋力維持に役立つのです。
1日3回全力で行なうと、1日の必要運動量を満たすほどの効果があるともいわれています。
漢方薬を利用する
一般的に病院では更年期障害にはホルモン補充療法がおこなわれますが、より副作用を抑えるには漢方薬があります。
更年期障害の際に用いられる漢方薬には加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などがあり、その人の体質や症状に合わせて摂取することで高い効果が期待できます。
しかし、漢方薬はサプリメントではなく薬ですし、体質に合わないものを飲むと症状が悪化してしまうこともあります。
購入する際には、必ず医師や薬剤師の指示を仰ぎましょう。
まとめ
女性を悩ませる更年期障害。
長い人では10年以上症状が継続するといわれています。
しかし現在では緩和する方法もわかってきていますから、抜け毛や薄毛防止のためにも積極的にトライすることをおすすめします。