正しい食生活が健康を維持するためには不可欠です。
しかし、いくら栄養価が高いものでもダラダラ食べ続けたりお腹が空いていないのに食べたりすると体調を崩してしまいますし、髪にも良くありません。
そんな時におすすめなのが、しっかり空腹を感じること。
お腹をすかせると、健康にも髪にもとても良い効果があるのです。
胃は空っぽにするのが正しい?
私たちは、空腹のままでいるのは良くない、お腹が空いたらしっかり食べなさい、と教えられてきましたよね。
しかし、大昔は食べたい時に食べられるような環境ではありませんでした。
自分たちで狩りをしたり植物を育てたりしない限り、飢えや死はすぐ近くにあったのです。
当然、お腹が空いても食べるものがないことが多く、数日飲まず食わずということも当たり前でした。
つまり、当時は胃の中が空っぽになる状態が長く続くことが普通だったのです。
人間のDNAには、その当時のことが今でも組み込まれているといわれています。
プチ断食など何も食べず胃の中を空にする状態を作り出すと、体調が良くなるといわれるのはそのためです。
胃を空っぽにすると起こること
胃の中が空の状態になると、以下のようなことが起こります。これらが、健康を維持するために大切なのです。
胃の大掃除は空腹時に行なわれる
胃は、食物が入ってくると胃液を分泌し、ぜん動運動をして消化します。
このぜん動運動は1日中行なわれていますが、食物が入ってくると伸縮の幅が大きくなり、消化したものを十二指腸へと送り出しているのです。
さらに、十二指腸にすべて送り出して1時間半程度経つと、胃のぜん動運動はさらに激しくなり、胃腸の内部に残った残骸などを掃除します。
そしてすべての掃除が終わった時に、また食物を食べてもOKというサインとして、グーッと鳴るのです。
このぜん動運動が最も強くなるのが、睡眠中の空腹時です。
ぜん動運動は約1時間半ごとに起こるといわれ、それを睡眠中何度か繰り返すことで、朝起きた時に便に取り込まれた残骸が排出されます。
このデトックス機能が正常に働いていると、胃腸は食べた物をしっかり消化吸収することができ、健康を保つことができるのです。
寝る直前に何か食べると、睡眠中強いぜん動運動が起きません。
そのためいつまでも胃の中に食べた物が残ってしまい、朝食欲がない、便秘になる、疲れやすくなるなど様々な不調の原因となるのです。
オートファジーが作用して老廃物がなくなる
オートファジーとは、空腹時に自分の細胞のタンパク質を分解してアミノ酸にし、エネルギー源とし、さらにデトックスすることをいいます。
これは2016年、日本人の大隅良典氏がノーベル賞を受賞した研究で、オートファジーが行なわれることで様々な病気の予防になることがわかりました。
このシステムによって、細胞内の老廃物が細胞自体によって掃除され、さらに身体に必要なタンパク質の材料を作り出すこともできるのです。
つまり、空腹時にはオートファジーのシステムが活性化し、細胞内の不要なものを排出するデトックス作用が盛んになるのです。
さらに、病原菌が侵入した時に、それを攻撃する白血球が殺せなかった菌をオートファジーが取り込んで分解してくれることもわかってきています。
IGF-1(インスリン様成長因子)が増える
IGF-1はインスリンとよく似た構造を持つ物質で、成長ホルモンから作られるアミノ酸の集合体です。
「若さホルモン」とも呼ばれ、以下の作用があります。
・特に思春期の成長を助ける
・細胞の新陳代謝を促進させる
・免疫力を高める
・自然治癒力を高める
・アンチエイジング効果がある
IGF-1は、空腹時に胃の中で合成されるグレリンという物質によって作られます。
グレリンは成長ホルモンの分泌を促進するとともに、食欲を増進させる作用があります。
つまり、空腹を感じるとグレリンが分泌され、IGF-1が増えることで身体を若返らせ、健康を維持することができるのです。
空腹が髪の成長に与える作用とは?
このように、空腹は健康のためにとても大切なものであることがわかります。
では、髪の毛にはどのように作用するのでしょうか。
髪の成長に必要な栄養素がたっぷり作られる
髪の毛はその8~9割がタンパク質からできています。
しかし、食事で摂ったタンパク質がそのまま髪になる訳ではありません。
一旦アミノ酸に分解され、それから髪の毛のケラチンタンパク質に再合成されるのです。
しかし胃がしっかり働かないと、タンパク質を充分消化することができず、アミノ酸に分解することができません。
元々、身体にとって髪の毛は重要な組織ではありません。
生命維持には全く関与していないからです。
そのため、栄養素が少なくなれば髪の毛には回って来なくなってしまいます。
そこで空腹の状態にすると、胃が充分休むことができるため、胃の機能が持続します。
さらに睡眠中に胃の中に蓄積された残骸を排出できるため、血液が清浄になり、髪の毛の成長を促進してくれるのです。
オートファジーによって血液サラサラ効果が期待できる
細胞は新陳代謝を繰り返していますが、加齢とともに老廃物が蓄積されやすくなります。
するとそれらが血中に入り込み、血管壁を狭くしたり血液をドロドロにしたりしてしまいます。
頭皮に張り巡らされている血管は髪の毛の1/10程度の太さしかない毛細血管なので、充分届かなくなってきます。
さらに、ようやく届いた血液も老廃物が含まれているため、髪に悪影響を与えるのです。
空腹状態にすることでオートファジーの状態になると、老廃物を取り除く働きによって血液サラサラ効果が期待できますから、髪が太くしっかり育つ助けとなるのです。
IGF-1が毛母細胞の新陳代謝を促す
最近になって、IGF-1に育毛作用があることがわかってきました。
毛穴奥にある、髪を産み育てる毛母細胞は新陳代謝を繰り返すことで増殖し、髪の毛を成長させますが、IGF-1は細胞の新陳代謝を促進させることが明らかになってきたのです。
毛母細胞は、毛穴内部のバルジ領域という部分から作られる毛包幹細胞が細胞分裂によってできたものです。
しかし、加齢とともに毛包幹細胞の機能が低下し、それに伴って毛母細胞の新陳代謝機能も衰え、髪の成長が遅くなってしまいます。
そこで空腹によってIGF-1を増やすと毛包幹細胞や毛母細胞の新陳代謝が活性化し、育毛に効果が期待できるのです。
今では多くの薄毛改善のクリニックなどでも注目され、頭皮に直接注射することで育毛効果を上げています。
空腹時具合が悪くなる!その原因とは
空腹状態を作ることが健康にも髪にも良いことがおわかりいただけたでしょうか。
しかし、中には空腹時胃が痛むという人がいます。その原因は何なのでしょうか。
ストレスの蓄積
胃腸の働きは、自律神経がコントロールしています。そのため、ストレスで自律神経が乱れると胃酸の分泌量が増え過ぎ、胃の粘膜にダメージを与えます。
消化しにくいものの大量摂取
消化に時間がかかるものを普段から摂っていると、胃がオーバーワークで胃酸の分泌がコントロールできなくなり、過剰になってしまうのです。
消化が悪い食べ物の例:脂肪の多い肉類(牛・豚)、ナッツ類、食物繊維の多い野菜、海藻、納豆、ゆで卵、ラーメン、そば、バターを使用したパン、こんにゃく、みかん、梨、キウイ、コーラ、サイダー、コーヒー、ケーキ など
食事の時間が不規則
食事の時間が不規則な状態が続くと、胃液の分泌量の調節がうまく行かなくなっていき、胃が荒れて胃痛の原因となります。
これらが原因となって胃が荒れていると、胃酸によってさらに荒れてしまい、胃炎を起こしやすくなります。
空腹そのものが悪いのではなく、胃酸の分泌量が異常に増える原因は別にあることが多いのです。
なお、このほか十二指腸潰瘍やピロリ菌などが原因となることもあります。
最後に
胃を休ませてあげることが、健康にも髪にも良い効果をもたらします。
とはいえ、無理な断食はかえって身体を壊してしまうこともあります。
まずは、おやつを減らしたり抜いたりすることから始めると良いかもしれません。
次に食事は必ず空腹を感じてから食べるようにし、食事時間が決まっている場合は量をうまく調整しましょう。
そして、週末は夕食を抜かすなどのプチ断食をすれば、健康にも薄毛にも良い効果が期待できますよ。