カラートリートメントといえば、頭皮にも髪にもやさしい毛染め剤として知られています。
実際、一般的なヘアカラーを使用してアレルギーや肌荒れを起こした人、あるいは髪がダメージを受けた人がよく使用しています。
しかし、中にはカラートリートメントでもアレルギーを起こしたり、抜け毛が増えて薄毛になってしまったりする人がいるのです。
もしあなたもそうだったら?
カラートリートメントでなぜトラブルが起きるのか、解説しましょう。
カラートリートメントとは
カラートリートメントとは一体どんなものなのか、まずは二剤式の白髪染め・ヘアカラーとの違いを説明しましょう。
二剤式白髪染めやヘアカラーのメカニズム
髪を染める商品には、大きく分けて「染毛剤」と「染毛料」があります。
「染毛剤」は医薬部外品で、染毛料は化粧品扱いと、大きく異なる点があります。
医薬部外品とは医薬品に準ずるもので、効果はあるが副作用の懸念もあるもののことで、二剤式のヘアカラーや白髪染めは医薬部外品です。
これらが医薬部外品とされている理由の一つは、その薬剤の強さから肌荒れやアレルギーを引き起こす危険性があるからです。
有名な成分の一つが、染毛剤のパラフェニレンジアミンやパラアミノフェノールなどの、いわゆる「ジアミン系」「フェノール系」酸化染毛剤です(あるいは両方をまとめて「ジアミン系」とする場合もあります)。
特にパラフェニレンジアミンはアレルギーを引き起こす危険性が認められており、旧表示指定成分にもなっている刺激物です。
また、染毛剤を浸透させるためのアルカリ剤や、元の髪色を脱色する過酸化水素などはタンパク質を変質させる作用があります。
染毛剤をしっかり浸透させるためには、髪の表面にあるうろこ状のキューティクルを開かせなくてはいけません。
健康な髪ほどキューティクルのうろこ同士が密着して染毛剤が浸透しにくいため、アルカリ剤で無理にキューティクルを変質させてこじ開けるのです。
また、過酸化水素は元の髪色を多少脱色して白髪との境が出なくするために配合されているブリーチ剤で、明るい色に染めるほど配合量が多くなります。
ブリーチ剤は最も髪を傷める薬剤の一つで、髪を弱くもろくしてしまうのです。
つまり、二剤式の白髪染めやヘアカラーを使用すると、髪につけば髪がゴワゴワでもろくなり、頭皮につけば表面が荒れたりアレルギーを起こしたりする原因となります。
さらには毛穴内に浸透して毛母細胞のDNAを破壊し、髪の健康を損ねてしまうのです。
カラートリートメントのメカニズム
そこで、ジアミン系の染毛剤やアルカリ剤、過酸化水素を使用せず白髪を染めるために考案されたのが、カラートリートメントです。
2001年に認可された染料のHC染料と塩基性染料を配合し、髪の表面と少し奥を染色します。また、アルカリ剤や過酸化水素は含まれていません。
これらの染料の特徴は、染毛剤と違い髪の奥まで浸透しないことです。
そもそもアルカリ剤が配合されていないので、キューティクルは開きません。
そこで、小さな分子のHC染料を配合し、閉じたままのキューティクルの隙間から入り込めるようにしているのです。
また、塩基性染料は髪の表面にあるマイナスイオンに吸着するプラスイオンを帯びた染料で、髪表面を染色します。
この2種類の染料によって、髪や頭皮に与えるダメージを減らしながらカラーリングできるようになっているのです。
ただし、カラートリートメントは使用者の髪質やダメージ具合によって、仕上がりが大きく左右されます。
健康な髪ほどキューティクルがしっかり閉じているのでHC染料が入り込みにくく、しかも髪の表面のマイナスイオンが弱いため、塩基性染料もしっかり吸着しません。
その一方、HC染料が一旦キューティクルの隙間から入り込むと、しっかり閉じたキューティクルの効果で流出しにくいため、色の持ちは良くなります。
また、ダメージへアの場合キューティクルが開いていたりなくなっていたりするため、HC染料は容易に髪の内部に入り込めます。
また、髪の表面のマイナスイオンが強いため、塩基性染料もしっかり吸着します。
しかし、HC染料はシャンプーごとに流れ出してしまいます。
HC染料の分子の小ささや塩基性染料の吸着力は、商品によってかなり違います。
そのため、どれほど評判が良い商品でも合うとは限らず、自分の髪の状態に適したものを探すのに手間がかかるというデメリットがあります。
カラートリートメントで抜け毛やトラブルが起こるのは?
このように、カラートリートメントは染まりにくい、あるいは色持ちが悪いという欠点はあるものの、安全性は二剤式の白髪染めやヘアカラーよりはるかに高いといわれています。
しかし、中にはカラートリートメントで髪がダメージを受けて抜け毛が増えたり、アレルギーを引き起こしたりしてしまう人がいます。
それは何故でしょうか。
天然色素が含まれているカラートリートメントの危険性
カラートリートメントに配合されているのは主にHC染料と塩基性染料ですが、他にも配合されている染料があります。
様々なカラートリートメントの公式ページを見ると、HC染料と塩基性染料のほか、植物由来の天然色素を配合しているものがよくあります。
その代表的な色素がクチナシ、紫根、ウコン、アナトー、藍(インディゴ)、黒豆などで、これらの働きでより自然な色合いに染まる、と書かれています。
しかし、これらは確かに染料ではありますが、アルミや銅、鉄などの金属イオンと結合させないと発色が悪く、定着もしません。
そのため、これらはカラートリートメントの染料としてはあまり効果がないと考えられます。
光や汗などに反応しやすく、変色してしまうものもあるため、むしろ主要な染料としては不向きといえるのです。
そして、これら植物由来の天然色素のデメリットは、植物アレルギーを引き起こす危険性があることです。
もちろん、古くから使用されてきた天然染料ですから、安全性が低いとは考えられません。
しかし、アレルギーというのはどんなものに対しても起こる危険性があります。
しかも、これらの植物が農薬まみれで育てられたものだとすれば、当然髪や頭皮にダメージを与え、抜け毛や薄毛、切れ毛、炎症などを引き起こす原因となるのです。
4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノールという染料
カラートリートメントの多くに、「4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール」という成分が添加されています。
これは酸化染毛剤の誘導体で、HC染料の一種とされています。
しかし、名称を見るとわかるように、「~フェノール」となっており、フェノール系の一種でもあります。
「~フェノール」は「~ジアミン」と化学構造が似ており、ジアミン系と比べると多少刺激は弱いものの、やはりアレルギーを引き起こす危険性があるのです。
肌が弱い人、あるいは一度二剤式の白髪染めやヘアカラーでアレルギーを起こした経験がある場合、この4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノールにも反応が出やすくなります。
そのため、この成分が添加されているカラートリートメントを使用すると、同じような反応が出てしまうことがあるのです。
実はHC染料や塩基性染料も刺激性がある
安全性が高いと謳われるHC染料や塩基性染料ですが、実はこれらにも刺激性があるという報告があります。
2005年、東京都健康安全研究センターによると、ある種のHC染料や塩基性染料にパラフェニレンジアミンと同じような感作能(アレルギー性)があるというのです。
現在までのところ、日本では大きなトラブルの報告はないものの、欧米ではすでにアレルギーを引き起こした例が複数報告されています。
化学構造がジアミン系やフェノール系とは違うため、酸化染毛剤でアレルギーを発症したからといってHC染料や塩基性染料でも同じような結果になるとは限りません。
しかし、肌が敏感な人は注意したほうが良いでしょう。
カラートリートメントでかゆみや炎症が出た場合は
二剤式の白髪染めやヘアカラーがダメなのでカラートリートメントにした、という人が増えています。
しかし、その分トラブルが起こる人も増加傾向にあります。
その場合、どうしたら良いのでしょうか。
カラートリートメントを変える
あるメーカーのカラートリートメントでかゆみや炎症が起きた場合は、まずは症状がおさまるまで待ってから、別のメーカーで試してみることをおすすめします。
配合染料の分子の大きさや配合量によって、肌への刺激がなくなる可能性があります。
酸性カラー(ヘアマニキュア)にする
心配な場合は、美容院で酸性カラーしてもらうというのも手です。
酸性カラーは染料にタール色素を使用しており、HC染料や塩基性染料より色落ちしにくいという特徴があります。
タール色素自体は多少刺激性がありますが、美容院なら頭皮につかないよう塗ってくれて、アレルギーが起こりにくくなっています。
なお、市販のヘアマニキュアは根元から5ミリくらい塗れない仕様になっているので、白髪染めにはおすすめできません。
まとめ
加齢とともに気になる白髪は、できるだけ目立たないように、かつ頭皮や髪にダメージを与えにくいものを選びたいものです。
自分に合ったカラートリートメントを使用したり、美容師に相談したりして、抜け毛や薄毛になりにくい方法を見つけましょう。