女性の薄毛

女性の薄毛・抜け毛は更年期障害とは限らない?甲状腺機能障害の可能性も?

最近、アラフォー・アラフィフの女性に甲状腺の病気が増えています。

この病気のやっかいなところは、症状が更年期障害と似ているため、本人はもちろん医師まで誤診するケースが少なくないことです。

抜け毛もその一つで、更年期障害の一症状だと放置していたら、実は甲状腺機能亢進症や低下症だったということがあります。

甲状腺機能障害と更年期障害、抜け毛の関係について解説します。

40歳過ぎたら抜け毛が増えた!これって更年期障害?

女性ホルモンの分泌量は30歳前後がピークで、40代に入ると急激に減ってきます。

すると様々な症状が現われやすくなります。

・肩こり
・倦怠感、疲労
・頭痛
・のぼせ
・腰痛
・多汗
・不眠
・イライラ、落ち込み
・めまい
・動悸
・抜け毛、薄毛

加齢とともに卵巣機能が低下すると、女性ホルモンの分泌量が減ってきます。
女性ホルモンには心身の健康を維持する働きがあるため、分泌量が減ると様々な不調が起こりやすくなるのです。

髪の毛にもその影響は現われます。
女性は男性より髪の寿命が2年ほど長いのですが、これは女性ホルモンのエストロゲンに髪の健康を維持する働きがあるからです。
そのため、40代以降分泌量が減ると、本数が減ったり細く弱くなったりしてしまいます。

抜け毛の原因が甲状腺機能障害の場合も

しかし近年になって、女性の抜け毛が甲状腺機能障害によっても起こるということがわかってきました。
特にこの障害は40歳以上の女性に多く、更年期障害と似た症状が出るため、医師でも誤診しやすいのです。

甲状腺の働きと、甲状腺機能障害と更年期障害の類似点について解説しましょう。

甲状腺とは?

甲状腺はのどぼとけのすぐ下、鎖骨の上にある蝶が羽根を広げたような形の臓器です。

縦横が約4センチととても小さいのですが、生命活動に非常に重要な役割があります。

それは、甲状腺ホルモンを作り出すことです。

甲状腺ホルモンの働き

このホルモンは海藻などに多く含まれるヨウ素(ヨード)を原料に作られるもので、血中に入り込んで全身に送られます。
甲状腺ホルモンには、以下の働きがあります。

・炭水化物やタンパク質、脂肪などをエネルギーに変える
・細胞の材料を作り、新陳代謝を促す
・脳の働きを活性化する
・体温を調節する

また、このホルモンは脳の視床下部という部分の指令によって分泌されるのですが、視床下部には自律神経や成長ホルモンの分泌を調節する働きもあります。
甲状腺ホルモンの分泌量の増減が、精神状態や成長・発育にも関わっているのです。

このホルモンが分泌されないと、人間は1~2ヶ月しか生きられないといわれています。
そのため、分泌量が増えたり減ったりすると視床下部が量を調整し、常に適正に保たれるようになっています。

しかし、加齢によって甲状腺の機能が衰えたり、免疫異常が起きたり、視床下部に異常が起きて甲状腺ホルモンの分泌を促すホルモンの調整がうまく出来なくなったりすると、分泌量に異常が出てくるのです。

甲状腺ホルモンが増えすぎると

「甲状腺機能亢進症」といい、女性の発症率は男性の4倍で、ピークは30代ですが高齢者にも発症します。
亢進症の約9割はバセドウ病で、免疫に異常が起きて甲状腺を刺激する抗体が作られてしまい、どんどんホルモンが分泌されてしまいます。

すると常にジョギングしているのと同じような状態になり、休んでいても汗が出たり脈が速くなったり喉が渇いたりといった症状が出るのです。

甲状腺ホルモンが減り過ぎると

「甲状腺機能低下症」といい、女性と男性の発症比率は20:1といわれています。
年齢は若年層から高齢者まで幅広く、ほとんどは橋本病が原因です。

橋本病はバセドウ病の逆で、免疫システムの異常によって甲状腺を攻撃し、甲状腺の機能が低下してホルモンの分泌量が減ってしまいます。

甲状腺機能低下症になるとエネルギーが作られにくくなるため、特に身体を使っていないにもかかわらず常に疲れやすく眠気や冷え性、便秘、貧血などが起こるようになります。

更年期障害と甲状腺機能障害は症状が似ている

更年期障害と甲状腺機能障害の症状は、実はこんなに似ています。

甲状腺機能亢進症との類似点

・汗をかきやすくなる
・脈が速くなり心臓がドキドキしたりのぼせたりする
・手足が震える
・イライラしたり落ち込んだりしやすくなる
・熟睡できない
・下痢しやすくなる
・抜け毛が増える

甲状腺機能低下症との類似点

・倦怠感や疲労感がありてきぱき動けなくなる
・いくら寝ても眠くぼんやりしてしまう
・めまいがする
・肌が乾燥して荒れる
・むくみやすくなる
・便秘がちになる
・手足が冷えやすくなり冷え性になる
・物忘れしやすくなる
・抜け毛が増える

このように多くの類似点があるため、40代に入ってからこのような症状が出ると、更年期障害と自己判断してしまう女性が多いのです。

また、更年期だと思い婦人科を受診すると女性ホルモン薬や漢方薬を処方されますが、甲状腺機能障害には全く効果がありません。

しかも、甲状腺機能障害を放置すると心不全や認知機能の低下、甲状腺ガンなどを発症する危険性があるのです。

甲状腺機能障害かどうか判断するには

甲状腺機能障害は、更年期障害のほか自律神経失調症やうつ病、肝機能障害、糖尿病など、症状が似ている病気が少なくありません。

そのため、自己判断はせず病院で診察を受けることをお勧めします。
血液検査でホルモン値を検査したり、エコー検査で甲状腺の形状を調べたりすることができますので、内科を受診しましょう。

一応自己チェックの方法としては、抜け毛以外にも不調がある場合、喉を触ってみてください。
首の下のほうが腫れているようなら、甲状腺機能障害の可能性があります。

また、親族に甲状腺機能障害を患っている人がいる場合、遺伝する可能性があるといわれています。

甲状腺機能障害を治療すれば薄毛や抜け毛は治る?

バセドウ病や橋本病は免疫の異常によるもので、現在のところ対症療法しかありません。

しかし、以下の方法で悪化を防ぎ、髪の毛にも良い影響を与えることは可能です。

甲状腺ホルモン治療薬を服用する

亢進症の場合はホルモンの分泌量を抑える薬を、低下症の場合は補う薬を服用することで、症状を改善させることができます。

特に甲状腺機能低下症の場合、ホルモンの量を増やすことで脳の視床下部の働きが安定して自律神経の働きも正常になるので、血流が良くなります。
すると髪を生み育てる毛母細胞に栄養が届きやすくなるため、髪の健康にも良い効果が期待できるのです。

海藻は不足しても取り過ぎてもNG

甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素(ヨード)は海藻や魚介類に多く含まれています。
そのため、通常の食事をしていれば不足することはありませんが、これらの食材をあまり摂らない場合は甲状腺機能低下症の原因になることがあります。

さらに、取り過ぎても低下症を引き起こすことがあります。
ヨウ素が過剰になると甲状腺が代謝し切れなくなり、機能が低下してホルモンを作れなくなってしまうのです。

ヨウ素は吸収されやすい栄養素で、水で戻したわかめ10gで1日の必要摂取量を充分摂取することができます。
なお、昆布は非常にヨウ素が多く、乾燥昆布5センチ角1枚で1日の必要摂取量の100倍以上含まれているため、摂り過ぎには注意しましょう。
ヨウ素配合のうがい薬も、常用は危険です。

ストレスを解消する

ストレスは交感神経を活性化させる作用があり、自律神経が乱れやすくなります。
するとそれが視床下部に伝わり、甲状腺ホルモンの分泌量も狂いやすくなるのです。

また、視床下部は女性ホルモンの分泌量も調整しているため、ストレスによって分泌量が減ると、髪の成長にも悪影響を及ぼします。
自分に合った方法で、ストレスをできるだけ解消しましょう。

まとめ

抜け毛や薄毛に悩むアラフォー・アラフィフの10人に一人は、甲状腺機能障害だという統計があります。

更年期に差し掛かって抜け毛が増えた場合でも、更年期障害だと自己判断せず、気になる症状があったら医療機関で検査することをお勧めします。