昔は黒ゴマやわかめ、昆布など黒っぽい食材が「白髪防止に良い」と考えられてきましたが、今となっては「単なる都市伝説」「色から来る連想」と思われているようです。
しかし、中国医学では「黒」は生命を司る色とされ、黒豆や黒ゴマ、黒米など黒い食材をとても重要視してきました。
当然、髪にも良い影響があると考えられているのです。
そこで今回は、中国医学で良いとされている黒い食材の力を、成分やその効能・効果から探ります。
黒色の持つ意味とは?
中国医学で考える食材の黒とは真っ黒だけではなく、黒褐色など茶系も含んでいます。
では、黒系食材には西洋医学的にはどんな意味があるのでしょうか。
「アントシアニン」とはポリフェノールの一種で、黒系の天然色素です。
この色は紫外線の害から身を守るために植物が自ら生み出したもので、特に直射日光が当たる部分ほど色が濃くなり、抗酸化作用が強くなるという特徴があります。
黒豆や小豆、黒米、黒ゴマなどの種皮などにはこのアントシアニンが多く含まれています。
黒ゴマの黒はタンニンの色?
黒ゴマの黒は、アントシアニンによるものだというのが定説になっています。
しかし、2009年に千葉大学が「黒ゴマの黒はタンニン系色素の可能性が高い」との発表を行ないました。
実は黒ゴマはほとんどアジアにしか流通しておらず、成分の研究が遅れています。
そのため、黒ゴマの黒が何の成分からできているのか、まだ解明されていないのです。
現在のところ、農林水産省のHPには、「アントシアニン」と記載されています。
ただ、タンニンもポリフェノールの一種で、アントシアニンと同じ分類になります。
タンニンの場合、苦味や渋みによって虫などから身を守るという違いはありますが、高い抗酸化作用があることは同じです。
海藻の褐色は葉緑素(クロロフィル)とフコキサンチン色素
一方、昆布やワカメ、ひじきなどの褐藻類の場合は、アントシアニンやタンニンとは違う色素によって黒系の色を作り出しています。
クロロフィルは緑系、フコキサンチンは鮮やかなオレンジ色で、2つが混ざることで黒っぽい色になるのです。
どちらにも抗酸化作用があり、蓄積された老廃物の分解・排出を促進させる作用があります。
黒い食材は中国医学だけでなく、西洋医学の観点から見ても高い健康効果が期待できることがわかりますね。
もちろん、中には両者で考え方が違う食材もありますが、少なくとも黒豆、小豆、黒米、黒ゴマ、昆布、ワカメ、ひじきは非常に抗酸化作用があり、健康を維持するために重要な食材なのです。
黒い食材の健康効果と薄毛への作用
ここでは、お勧めの黒い食材が持つ、特に注目すべき成分とその作用をみていきましょう。
薄毛にどう働きかけるかも一緒に解説します。
黒豆
黒豆にはビタミンB群、ビタミンE、ナトリウム、鉄、亜鉛、銅、カルシウムなどが含まれており、栄養価が高い食材です。
また、以下の成分も含まれています。
・イソフラボン
女性ホルモンに似た作用をする成分です。
女性ホルモンは分泌量のピークが30歳前後で、それ以降は減っていきます。
このホルモンにはコラーゲンやヒアルロン酸を合成する働きがあるため、減少するとシワやたるみが増えてきます。
また、女性ホルモンには髪の成長期を伸ばし抜けにくくする働きもあるので、35歳前後から抜け毛が気になり出すという女性が多くなります。
そこで黒豆を摂ると女性ホルモンが増え、美肌や美髪を保つサポートをしてくれるのです。
・レシチン
脳の働きを調整し、記憶力や判断力を高める作用があります。
また、血中のコレステロールを溶かし排出することから、動脈硬化の予防・改善効果があるといわれています。
この働きは、髪の毛の成長にも大いに関係があります。
頭皮に張り巡らされた血管の多くは毛細血管で非常に細いため、コレステロールが混じってドロドロになった血液は通ることができません。
そのため、髪が栄養不足になり、抜けやすくなるのです。
レシチンには血液の循環を良くする作用があるので、髪の健康維持にも効果が期待できます。
・アントシアニン
日常生活や紫外線、ストレスなどで増える活性酸素は、細胞のDNAを損傷し酸化させてしまいます。
すると新陳代謝ができなくなるため、シワやたるみの原因となります。
また、肌は紫外線によって活性酸素が発生するとメラニン色素を合成し、これが蓄積されるとシミになってしまいます。
さらに、髪を育てる毛母細胞の機能も低下し、クセ毛や細毛、白髪が増えてしまうのです。
アントシアニンには抗酸化作用があり、細胞が酸化するのを防いでくれるため、肌の弾力性の維持や髪の成長促進をサポートしてくれます。
小豆
小豆には、黒豆以上に豊富な栄養素が含まれています。
ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンE、ナトリウム、カリウム、鉄、亜鉛、銅、カルシウム、マグネシウムなど、特にミネラルが豊富です。
・サポニン
サポニンには脂肪の蓄積を抑制し、肥満を防止する作用があります。
また、血糖値や中性脂肪、コレステロール値も下げ、肝機能を改善させることがわかっています。
さらに、免疫力を高めたり血流を良くしたりする働きもあるので、生活習慣病やメタボの予防に効果があるといわれています。
髪の毛への作用はレシチンと同様で、血液をサラサラにして流れをスムーズにするため、育毛効果が期待できます。
黒米
黒米は古代米の一種で、白米に比べタンパク質やビタミンB群、ナイアシン、鉄、カルシウム、亜鉛などが豊富です。
黒米の一番の特徴は、食べ続けると髪がつややかになり、太くしっかりしてくるということです。
これは、亜鉛や鉄、ビタミンなど髪に良いといわれる成分が豊富だからだと考えられています。
ある大手化粧品メーカーは、女性用育毛剤などに黒米から抽出したエキスを配合しています。
また、近年の研究でシミやくすみ、肌のたるみの原因となる様々な悪玉酵素の働きを食い止める作用があることがわかってきました。
楊貴妃も好んで食べていたといわれ、美容に高い効果が期待できます。
黒ゴマ
黒ゴマには、タンパク質、糖質、脂肪酸、ビタミンB群、ビタミンE、ナトリウム、カルシウム、鉄、亜鉛、銅など、非常に多くの成分が含まれています。
・セサミン
セサミンには高い抗酸化作用があり、活性酸素によってコレステロールが酸化するのを防ぐ働きや、肝機能を高め、悪玉コレステロールを減らす作用があります。
コレステロールが血中に大量に入り込むと、血管に粘着して血液の通り道を狭くしてしまいます。
さらに血液に粘りが出て流れにくくなるため、頭皮まで届きにくくなります。
そこでセサミンを摂ると血管がきれいになり血液もサラサラになるため、髪の毛が健康に育つ助けとなるのです。
・ゴマリグナン
ゴマリグナンはセサミンやセサモール、セサミノールなど黒ゴマの抗酸化成分の集合体で、女性ホルモンに似た働きをします。
イソフラボン同様、髪の成長期を伸ばし抜けにくくしたり、コラーゲンやヒアルロン酸を合成したりする作用があるため、美髪・美肌の維持に役立ちます。
褐藻類(昆布・ワカメ・ひじき)
昆布はビタミンK、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、ヨウ素が豊富です。
また、ワカメはビタミンB群、特に葉酸が多く、ひじきは鉄やカルシウムも多く含んでいます。
・フコイダン
表面のネバネバ成分で、ガン細胞やウイルス感染細胞と闘うナチュラルキラー細胞の働きを強化する作用があり、免疫力向上や抗ウイルス効果があります。
また、ガン細胞を死滅させる作用があるという研究結果が発表され、現在も研究が進んでいます。
また、フコイダンのネバネバが髪の表面を保護し、さらに毛母細胞の増殖を促進させるといわれ、女性用育毛剤によく配合されています。
・フコキサンチン
抗酸化作用の強い成分で、動脈硬化や心筋梗塞を予防するといわれています。
さらに、動物実験で脂肪を減少させる効果が出ており、メタボ改善に役立つと期待されています。
また、数年前に毛髪クリニックがフコキサンチンに育毛効果があると発表しました。
実験によると、毛細血管から届く血液を貯蔵する毛乳頭の細胞増殖が促進され、髪の成長因子などの量が増えたという結果が出ています。
・ヨウ素(ヨード)
ヨウ素には代謝を促進させる働きがあり、細胞の正常な新陳代謝に欠かせない成分です。
また、最近の研究で悪玉コレステロールを減らす作用が見られたとの報告もあります。
ヨウ素は皮膚や髪の毛など、細胞の新陳代謝や分裂・増殖が盛んな部分が最も必要とする成分の一つです。
毛母細胞の機能を高めて髪の成長を助けたり、肌の老化を予防したりするために不可欠とされています。
まとめ
何気なく摂っていた黒い素材にこれだけの作用があると知って、驚かれたのではないでしょうか。
「黒」は東洋医学でも西洋医学でも、健康の維持に重要な色です。
今回ご紹介した食材を積極的に摂って、身体はもちろん、髪やお肌の健康も保ちましょう。